経営トップの判断と戦略、行動で企業の命運が左右される【私の雑記帳】
財界オンライン / 2023年4月14日 18時0分
金融危機の中で…
コロナ禍が和らぎ、ウクライナ危機の解決の糸口をどう見つけていくかと世界中にまだ緊張感が残っているときに、今度は金融危機である。
【あわせて読みたい】 日本電産・永守重信が今、思うこと「環境激変・困難期を生き抜く人材こそ」
3月10日、米シリコンバレーバンク(SVB・カリフォルニア州)が破綻。預金の引き下ろしが瞬く間に広がり、2日後には米ニューヨーク州のシグネチャー・バンク破綻へと飛び火した。
その数日後には、カリフォルニア州のファースト・リパブリック・バンクが危機に追い込まれ、大銀行が救済に回るといった具合に、米FRB(連邦準備制度理事会)と金融界も極度の緊張を強いられている。
世界的な金融危機のリーマン・ショックが起こったのは2008年9月。
有力投資銀行のリーマン・ブラザーズが約6000億ドル(約70兆円)もの負債を残して倒産。同じ投資銀行のメリルリンチはバンク・オブ・アメリカの完全子会社となって生き延びた。
それから15年近く経っての今回の米銀の相次ぐ破綻劇。今回、欧州の名門クレディ・スイスも危機に見舞われ、慌てたスイス政府は同国1位のUBSがクレディ・スイスを買収することで、当面の危機を回避。
今回、米政府にしろ、スイス政府にしろ、動きは機敏で早かった。米政府がSVBの預金を『全額保護』と即応したのも、下手すれば金融危機が一気に広がる─と読んだからであろう。
それでも、市場の不安心理はそう簡単には消えない。緊張感の中で、しっかり対応していかなくてはならない。
産業人の士気は高い
こうした状況下に、産業人も肝を据えて、経営に取り組まなければならない。
世界45カ国で拠点を構え、全売上の9割近くをグローバル市場であげる日本電産(今年4月、ニデック=NIDECに社名変更)は、今年1月、「2023年3月期の決算で垢を全部取ってしまう」として、連結純利益は前年比56%減の600億円になる見通しと公表。
創業者会長の永守重信さん(1944年=昭和19年生まれ)の一大決断だが、環境激変をいち早く察知し、垢を取る作戦に打って出たということ。時代が大きく変わり、環境も変化するとき、いかにそれに対応していくか。文字通り、ここは経営トップの判断と戦略、そして行動でその命運が左右される。
味の素・藤江さんの〝志〟
「ピンチはチャンスだと思っています。逆にチャンスはピンチだと思いますので、さまざまな変化をいい機会として捉えられるかどうかというのがポイントじゃないかなと思います」
味の素社長の藤江太郎さん(1961年10月生まれ)はこう語り、「これまでの経験もあまり順風満帆の仕事をしてきていなかったものですから、割とそういう変化の時にいろいろな成長の機会があるというのを体験しているところがあります」と前向きに対応していく考え。
原材料コストの高騰、それを製品価格にどう反映させていくか、はたまた、社員の賃上げをどう上げていくか─といった今日的課題にどう取り組むか?
まさに今、経営トップの『覚悟』が問われているが、筆者が取材しているトップの皆さんの士気はすこぶる高い。自分たちの存在意義は何か、自社の強さと課題を把握しながら、それを追求しておられる。
藤江さんは中国事業を手始めに、海外事業を担当。赤字だったフィリピン事業を軌道に乗せられた。
受け継ぐべきもの
経営は持続されるべきものという視点で、前任の社長・西井孝明さん(1959年12月生まれ)から、受け継ぐものは何か?
「それはASV、Ajinomoto Group Creating Shared Valueです。社会課題を解決しながら経済価値、儲けも出させていただいて、この儲けをさらに多くの社会課題を解決しようというASVです」
このASVをしっかり受け継ぎながら、藤江さんは、「志と志に向けた社員の熱意と、そして1人ひとりが実力を磨き込むこと。これを出した人たちは『志×熱×磨(く)』と読んでいます」と語る。
その製品の価値、引いては企業価値を見定めるのはやはり客。その客の心をどう掴んでいくか?
「そうですね。価格改定にしても、その製品の価値をお客様に認めていただけない製品はやはり値上げできないですよね。そういう面でも、自分たちが強くなり続ける。磨き続けるということが大事だと思います」
『志×熱×磨』をこの変化の時代に合い言葉として生き抜こうという藤江さんの経営を4月19日号でレポートした。
潜在力掘り起こしへ
日本の成長力が停まったとか、存在感が薄れてきた─と言われて久しい。
GDP(国内総生産)でも、このところの円安で、3位の座が脅かされ、4位ドイツどころか、その後に控えるインドあたりにも近々抜かれるのではという見方が強まる。
潜在成長力をどう掘り起こしていくか─。今、日本全体に突きつけられたテーマ。
これは産業界にとっては重要な課題だが、産業界だけで国力を高められるわけではない。人材育成という意味では、教育、さらには家庭との連携が不可欠だし、地域社会との連携も必要。
政治、経済、教育、文化と各領域が連携し、国全体で取り組んでいく時だと思う。
栗山監督、ありがとう!
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で〝侍ジャパン〟が見事に優勝を果たした。
3大会ぶりの栄冠。対メキシコ戦の準決勝、米国相手の決勝戦は、最後の最後まで諦めず、文字通り死力を尽くした戦いぶり。栗山英樹監督の選手を最後まで信じる采配が光った。
今回の結果に、日本中が勇気をもらったが、何より各選手が自分の持ち味をしっかり発揮したことと、監督と選手の間の信頼関係があったことが大きな勝因である。
MVP(最優秀選手)の大谷翔平選手やダルビッシュ投手らだけでなく、1人ひとりが力を発揮したと言える大会だった。
ラグビーで言う、〝One for All, All for One.(個人はチームのために、チームは1人ひとりの選手のために)〟という精神が今回のWBCで発揮されたと言っていい。
日本全体が何かと活力を失ったという話が多い時だけに、今回のWBC優勝は日本に元気と活力を植え付けてくれた。
〝侍ジャパン〟に見習って、日本全体に活力を取り戻していきたいものだ。
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