【外務省】政府が同志国の軍へ 防衛装備品提供の新制度創設
財界オンライン / 2023年4月28日 11時30分
外務省は5月に開幕が迫るG7広島サミットの準備に追われているが、その裏で対外交渉の新たな「武器」を手に入れたと喜びに包まれている。政府が途上国への支援となる政府開発援助(ODA)の拡充方針を決めただけでなく、同志国の軍などに防衛装備品を提供する無償資金協力の新制度「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の創設を決めたからだ。
OSAは、元外務次官の秋葉剛男国家安全保障局長がかねて導入を求めてきた政策だ。非軍事を前提としてきたODAとは別枠の予算の扱いとなり、政府は今年度予算に20億円を計上。殺傷能力を持たない防衛装備品を、日本と安全保障上密接な関係を持つ同志国に供与する。政府は第一弾として、フィリピンとマレーシア、バングラデシュ、フィジーの4カ国を指定し、通信衛星システムや警戒監視レーダーなどを提供する考えだ。
OSAの表向きの目的は、東南アジアで覇権主義的な動きを強める中国に対抗し、途上国で日本の影響力を強める狙いだ。ただ、外務省幹部は「省にとって、比較的自由に使途を指定できる『財布』が新たにできたことは間違いない」とほくそ笑む。OSAは相手国の軍事支援が目的となるが、具体的な需要調査や供与する装備品の選定は、事実上外務省が仕切ることになるからだ。
外務省は長年、財務省にODAの削減を強いられてきた。今回のOSAの創設は、5年間外相を務めた岸田文雄首相が、最近の中国の動きもにらんで決断したという。省幹部は「OSAは、中国やロシアとも関係を持つ中間国の取り込みにも有益だ。岸田首相は外務省のかゆいところに手が届く」と笑顔をみせている。
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