日銀総裁に植田和男氏が就任、金融危機の中、政策変更はいつか?
財界オンライン / 2023年4月26日 18時0分
「1998年の新日銀法施行以来25年間、物価安定の達成は積年の課題。長年の研究や過去に審議委員として政策運営に携わった経験を活かし、このミッションの総仕上げに尽力したい」
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3月9日、日本銀行総裁に就任した植田和男氏は就任後初めて日銀本店に出勤した10日夜、初の記者会見で金融政策の正常化に向けた意欲を示した。
一方で、前総裁の黒田東彦氏の異次元緩和を支える中核的な手法となってきたYCC(長短金利操作)については、現状の経済、物価、金融環境を踏まえると「継続するのが適当」と述べ、早期の枠組み撤廃には慎重な姿勢を強調した。
市場には「金融不安の台頭で長期金利の実勢が下がっている今がYCCを修正・撤廃するチャンスではないか」(大手証券アナリスト)との穿った見方もあるが、日銀内では「欧米の金融も経済も不安定な中であえて賭けに出るような行為をして市場の混乱を引き起こすのは賢明ではない」と慎重な意見が大勢。
従来は植田氏が初めて臨む4月27、28日の金融政策決定会合で「修正に踏み切るのでは」との観測もあったが、今は米欧の金融、経済情勢を見極めながら「修正に動くのは6月以降」との見方が強まっている。
ただし、YCCの修正・撤廃に向けた道のりは波乱含み。まず債券市場の過度の変動をどう回避するかが難題。6月までのYCC撤廃への思惑を膨らませる海外投機筋は国債の空売りを仕掛けようと虎視眈々と狙っており、YCCの変動許容幅引き上げによる修正や撤廃のタイミングを誤れば、長期金利の急騰を招くリスクがある。
円高リスクも無視できない。YCCの修正や撤廃が市場で事実上の「利上げ」と受け止められれば、超低金利の日本円を借りて高金利の米ドルに投資する「円キャリートレード」が反転して、円高を招きかねず、景気や物価に深刻な影響を及ぼす恐れがある。
長期金利や円相場、金融システム、政治など、あらゆる面に配慮しつつ、異次元緩和からの脱却の道筋を描けるか。植田日銀の金融政策運営の舵取りは難航が予想される。
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