三井住友FGが発行を再開した 「AT1債」、「次のリスク」に警戒も
財界オンライン / 2023年5月16日 7時0分
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が1400億円のAT1債(永久劣後債)発行を決め、国内外の金融界から注目を集めている。
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経営危機に陥ったクレディ・スイス・グループのAT1債がスイス当局主導で同業のUBSによる救済買収に伴い「紙屑」とされて以降、世界の主要行で初の発行だからだ。救済買収が決まった際、クレディ・スイス株式には価値が残る一方、本来、株式より安全性が高いと見做されてきた債券が紙屑となったため、市場で動揺が広がった。
AT1債は「Additional Tier1」という名の通りに、銀行の自己資本比率算定上の中核的自己資本(Tier1)に算入できるのが特徴。新規調達がストップすれば、自己資本が目減りした銀行がリスク回避姿勢を強め、深刻なクレジットクランチ(貸し渋り)を引き起こす恐れが指摘されていた。今回、SMFGによる新規発行の実績ができたことは投資家の不信払拭にも一役買いそうだ。金融庁幹部は「資本調達市場の正常化に向けた一歩」と意義を強調している。
ただし、金融危機の余波は続く。日本当局が警戒しているのが、欧米当局が行き過ぎた銀行規制に走ること。俎上にのぼっている規制強化案は大きく2つ。1つは米シリコンバレーバンクの破綻でクローズアップされた国債保有リスクを抑制する措置。もう1つは預金者の取り付けに対する耐久力を高めるため、手元資金の水準を示す流動性カバレッジ比率規制を見直す案。
前者の銀行の国債保有規制に向かうと、全体で150兆円近く日本国債を保有する邦銀は自己資本比率が大きく目減りする恐れがあり、影響は甚大。「貸し渋りの嵐となり、経済を窒息させてしまう」として金融庁は反対する構え。さらに異次元の金融緩和からの脱却が課題である日本にとっては「日銀が購入を減らした場合、国債の受け皿が不在となる事態」(アナリスト)も杞憂とは言えない。
だが、世論や議会の批判にさらされる欧米当局が規制強化に前のめりになる可能性も排除できない。日本の当局も欧米の規制議論の行方を注視している。
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