【株価はどう動く?】先行き不透明な欧米経済、「バイジャパン」の流れは強まるか?
財界オンライン / 2023年5月12日 7時0分
「大回り3年、小回り3カ月」の格言
以前から、2023年1―3月期が株価の底になる可能性があると指摘してきました。その相場見通しの背景の1つとして、「時間の波動」があります。
【あわせて読みたい】【株価はどう動く?】欧米の「信用不安」で株価は一進一退、「質への逃避」は日本にどう影響?
今回の相場の出発点は、2020年3月19日の1万6358円で、これは「コロナショック」の安値です。ここから「3年」というのが1つの日柄です。
江戸時代、米相場の時代から、相場世界では「大回り3年、小回り3カ月」という格言があります。山から谷へ、谷から山への周期が中期では3年、短期では3カ月ということです。
ちなみに私は大回りを「2年半から3年」、小回りを「2、3カ月」と考えています。この中には「3月またがり60日」の波動もあります。
「大回り3年」で見ると、20年3月から3年は23年ですから23年4月というのは、この周期と合っています。今後株価が上がれば波動通りということです。
日経平均は2万8000円の壁を突破して、4月18日には年初来高値を更新するなど、新しい上昇波動がやってきているのではないかという動きです。
波動から見て、23年4月以降株価が動き出す見通しですが、ではなぜ、株価は動き出すのか。
第1に、23年4月から大企業を中心に多くの企業で賃上げが始まり、個人消費の高まりが期待されます。これが景気を押し上げ、株高の要因となります。
第2に、22年10月に1ドル=150円台を付けた円安です。円安の恩恵を受けた企業の業績がよく、これは株高につながります。昨年度では海運、鉄鋼、商社です。大手商社の株を、著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが買っていたことも話題になりました。加えて、インバウンド(訪日外国人観光客)が拡大しています。
第3に日本が脱デフレ、インフレに転換する可能性があることです。適度なインフレとなると株価が上がり、「眠れる1000兆円」が動き出します。
日本の個人金融資産のうち、現預金で眠る1000兆円が株式市場、不動産市場に入ってくるわけです。すでに昨年来、ネット証券を通じて積立型の株式投信が非常に売れています。
これらの要因で、23年4月以降、新たな株高がやってきています。前述の「年初来高値」は株価上昇のサインです。
年末に向かって、3万5000円を目指す動きになるのではないかと思います。当面は21年9月の3万700円台を年央くらいに取りにくると見ています。5月の広島サミット、その後に解散総選挙があるかはわかりませんが、いずれにせよ広島サミットで岸田政権の支持率が、さらに高まる可能性があります。
もし、21年9月の3万795円という高値を年央に奪回したら、その後は一度下落して底入れした後、年末あるいは来年年初に向かって3万5000円を目指す相場が始まります。
ですから賃上げ、企業業績の改善、雇用増、設備投資の拡大という経済の好循環を呼び込む可能性が出てきています。
米シリコンバレーバンク(SVB)破綻に端を発した欧米の金融機関に対する信用不安は、当分続く可能性があります。
米国ではFRB(米連邦準備制度理事会)が金利引き上げを続けると思われますが、そうなると財務体質の弱い欧米の銀行が経営破綻したり、危機を迎える可能性はあり得ます。
ただ、欧米の当局には08年時の教訓があります。リーマンブラザーズを潰したことで、世界は恐慌の淵まで行ったという反省があるのです。今回の危機では、欧米の中央銀行が素早く動き、米国では破綻した銀行の預金保護、欧州ではクレディ・スイスの危機に政府が主導して救済合併を実現しました。
ですから今後も金融機関の破綻や危機が続く可能性はありますが、それが世界経済の崩壊や恐慌の引き金にはならないのではないかと見ています。
ましてや、欧米の金融機関に比べて日本の銀行は健全です。デフレの時代でもリスクを取った運用をしていなかったからです。これは、日本経済の健全性を示しており、以前から指摘している「バイジャパン」(日本買い)、日本に投資する傾向が高まるのではないかと見ています。
「バイジャパン」は株式市場だけでなく不動産、その他日本の商品全てで強まる可能性があります。こうした傾向はこれまで中国が対象でしたが、今後中国は欧米経済から排除される可能性が出ています。中国に投資してきた欧米の企業や投資家が、どこに投資するかというと日本しかありません。
韓国は市場が小さく、10年、20年後を見てインド、インドネシアといった人口大国は対象になり得ますが、すぐに欧米や日本並みのインフラや教育水準、治安の良さなどを整えられるかというと難しいからです。
さらに、今の中国やロシアのような専制国家になってしまうと、富裕層や能力の高い人材は外国に流出してしまいます。
新しい株高相場の中における投資テーマを探ると、第1に「資産インフレ」関連銘柄です。首都圏マンションの平均価格が1億円を超えるなど、すでに資産インフレは始まっています。
第2に、脱デフレで日本株全体の底上げが行われますが、その中で好業績、高配当銘柄が買われることになります。前期は海運、鉄鋼、商社でしたが、これ以外にも出てくるでしょう。
第3に「技術革新」関連です。AI(人工知能)、生成AI「チャットGPT」などテクノロジーや脱炭素関連が注目されます。
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