《創立100周年の梅村学園》中京大学長・梅村 清英「〝知・体・徳〟の3つの要素を兼ね備えた人材を育成していく」
財界オンライン / 2023年6月1日 18時0分
勉学やスポーツを通じて人間性を養っていく
─ 中京大学の母体である学校法人梅村学園が創立100周年を迎えました。この100周年についての感想を聞かせてくれませんか。
梅村 梅村学園は1923(大正12)年3月17日、中京商業学校(現・中京大学附属中京高等学校)の開校から始まり、無事に創立100周年を迎えることができました。これまで学園との関わりを持っていただいた全ての皆様方の温かいお力添えの賜物であり、深く感謝申し上げますと共に、次の100年に向けて力強く一歩を踏み出したいと考えております。
梅村学園はわたしの曽祖父にあたる創立者の梅村清光が『真剣味』という校訓を定めました。祖先が水戸藩士でしたので、創立者は水戸学の精神を教育のルーツとしました。
かつて水戸には弘道館という藩校があって、弘道館の建学の精神の一つにある「文武不岐」を踏襲しました。
─ いわゆる文武両道ということですね。
梅村 厳密には若干異なりますが、平たく言えばそういうことです。文武岐かたずということですね。
校訓『真剣味』の「真」は、真実・真理の真で知育を表しています。「剣」は剣道・剣術の剣で体育、「味」は人間味の味で徳育。いわゆる〝知・体・徳〟の3つの要素を兼ね備えた人材を育成していくという意味が込められています。
開校から31年後の1954年(昭和29年)に中京短期大学が開学し、その2年後に四年制の中京大学が開学しました。この時に、大学の開学者である梅村清明が校訓を具現化し、建学の精神『学術とスポーツの真剣味の殿堂たれ』を定めました。
─ 梅村清明さんは理事長の祖父になるわけですね。
梅村 はい。ここで文武不岐の「文」の部分を学術、「武」をスポーツに置き換えて、校訓にある「真剣味」を組み込んで、『学術とスポーツの真剣味の殿堂たれ』となりました。
われわれは100年前に中京商業学校を設置した当初から、教育の一環としてずっとスポーツを取り入れてきました。これは明確な理由がありまして、単なる文武両道というよりも、スポーツの世界を社会の縮図とみなしたのです。
当時の教育目標はしっかりとした人材を実業界に送り込むことでしたから、スポーツの世界で培った様々な経験や人間関係は必ず実社会に役立つと。学校での勉学やスポーツを通じて様々な経験をし、人間性を養っていく。それが即戦力として社会に役立っていくという考えがあったのです。
─ それを具現化してきた100年だったと。
梅村 ええ。ですから、結果的に学園の中から夏季・冬季合わせて延べ160名を超えるオリンピアンが生まれましたけれども、これだけ世界で活躍する人材が育ってきたのは、開校以来のそういう流れがあってのことなのです。
─ 160名のオリンピック選手を輩出したというのは、日本でもトップ5に入るくらいの数ですか。
梅村 他大学でも多くの選手を出されていますので、詳しくは分かりませんが、トップ5に入るくらいじゃないでしょうか。間違いなく中部地区では断トツのトップだと思います。
学術とスポーツのさらなる殿堂を築いていくというのは、変えることのできない伝統ですので、次なる100年に向けて、今後も踏襲していく考えです。
将来的な総合学園化も検討
─ 先日、厚生労働省から2022年の出生数が80万人割れしたことが発表され、関東の女子大学で学生の募集を停止するところも出始めました。人口減少時代に入って大学経営も厳しい時代を迎えているんですが、改めて、大学の役割をどのように考えますか。
梅村 これは本当に深刻で、この子たちが皆元気で健康に育っても18歳になる2040年には80万人を割っているということですよね。今の18歳人口が112万人くらいなのですが、国の予想以上のスピードで少子化、人口減少が進んでいるわけです。
ですから、今は大学よりも高校、高校よりも中学、小学校で、どんどん統廃合が進んでいて、全国的に公立の中高一貫校をつくるケースも進んでいます。われわれの本拠地がある愛知県は後発組だったのですが、2025年に4校ができる状況になっています。
そうなると私学との競争もまた生まれてきますし、子供の数が少なくなっている中で、どのように生き残っていくかというのは重要な問題です。
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─ 学校も整理淘汰が激しくなっている中で、梅村学園ならではの教育をどう展開していきますか。
梅村 われわれとしては冒頭に申し上げた建学の精神に則り、学術とスポーツの更なる殿堂をしっかりと築き上げていきたいということ。そして、今は大学と高校の2校体制で学園を運営していますけれど、ゆくゆくは、この名古屋の地での総合学園化を視野に入れていきたい。
今は高校・大学の7年間の一貫教育を実施していますが、中学校ができれば10年間の一貫教育になります。より長いスパンでの教育ができると思いますので、いろいろなことを視野に入れながら運営にあたっていきたいと考えています。
─ その場合もやはり、名古屋が拠点になるわけですね。
梅村 もちろんです。うちは名古屋で育てられた学園ですし、日本の中でも名古屋というのは自然と都会が融合した雰囲気があって、どこの都市圏よりも教育環境が恵まれている場所だと思うのですね。
このような地の利を生かしていきたいと思いますし、ここはモノづくりや第一次産業が盛んな地域ですから、そうした面で何らかの貢献ができるような存在でありたい。
この地域には、日本が生き残っていくために必要な条件が全て揃っていると思いますし、そのポテンシャルは無限に可能性があると思いますので、そういうところに貢献できる人づくりをしていきたいと考えています。
続きは本誌で
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