【株価はどう動く?】欧米で信用不安、地政学リスクが高まる中、日本株は新たな上昇波動に?
財界オンライン / 2023年5月31日 18時0分
日本株に対して弱気になる理由
現在の東京株式市場に関して弱気の人は、なぜ弱気になっているのか。第1に欧米の銀行の経営破綻や危機による信用不安です。これは1つの弱気材料です。第2に、米国では債務上限問題が起き、6月1日までに合意しなければデフォルトになる恐れがあると言われています。最終的には合意するのだとは思いますが、この問題に対する警戒感が出ています。
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第3に、ロシア・ウクライナ戦争が5月、6月に1つの転機を迎える可能性があることです。裏付けは取れないものの、ウクライナ軍の大反攻があるのではないかという話が伝わってきます。戦争は完全に消耗戦になっていますが、次第にウクライナ軍の方が優勢になっていくのではないかと見ています。
なぜなら、米国やNATO(北大西洋条約機構)が全面的に支援をしているからです。ロシアは欧米と消耗戦を戦っており、プーチン大統領は相当なプレッシャーを受けているものと想像します。
かといって、保有している核兵器を使うわけにもいかないでしょう。世界中から非難されることは目に見えていますし、米国などから核兵器によって報復されるリスクすら浮上します。
いずれにせよ5月、6月以降、地政学リスクが高まることが予想されるのです。
そして世界経済のインフレは簡単には止まりません。ロシア・ウクライナ戦争の長期化、拡大によって資源・エネルギー価格の上昇は目に見えています。
一方、日本自身に何か不安材料があるかというと、ありません。金融機関の信用不安も起きていません。特に日本の銀行はこの30年間、欧米の銀行のようにレバレッジの高い運用を全くしてきませんでした。むしろ、デフレの中を耐え忍んできたのです。これは日本の大企業全体にも言えることです。
日本はインフレでもありません。それどころか、未だデフレを脱却せず、デフレの長いトンネルを抜け出るか?という期待が出ているような段階です。
米国では、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げが続けば、財務体質の弱い中小銀行が破綻する可能性が今後もあると思います。これらの材料によって米国の株価が急落し、日本の株も一緒に下げるという局面があり得ますが、その時は絶好の日本株の買い場となります。日本はG7の中で一番問題のない国と言ってもいい状況です。
日本経済が抱えるリスクも
相場の波動で見ると、今回の日本株の上昇の出発点は2020年3月19日の1万6358円です。これはコロナショックの安値です。ここから約1年上昇して、21年2月16日に3万714円で一番天井、9月14日に3万795円で二番天井を付けました。
底入れしてから12ないし13カ月上昇するというのが、時間の波動、日柄ですから、その通りの動きとなったわけです。
株は二番天井を付けてから本格的な下落調整局面に入ります。その後、株価は22年3月9日まで下落し、2万4681円で底入れしました。
20年3月が「底」だったわけですが、そこから「大回り3年」の法則で言うと、23年3月までにコロナショックの安値に対する二番底を入れて、23年4月以降に上昇するというのが、波動から見た読みだったわけです。
株価は二番底を入れて本格的に上昇を始めます。その意味では22年3月9日の2万4681円は一番底です。その後、22年10月3日の2万5621円で二番底が入っています。その後、株価はジリジリ切り上がって、23年1月4日に2万5661円で三番底が入ったと見ています。つまり「トリプルボトム」が入り、ここから上昇波動に入っていたのです。
その後の安値は3月16日の2万6332円とジリっと上がっていますが、4月27日の安値、2万8241円が相場の転換点となったと見ています。
つまり、前述の21年9月14日の3万795円から、22年3月9日の2万4681円までの下げ幅の半値戻しに近い、約2万8000円が攻防の分岐点となっていました。これを4月27日前後に突破してきたのです。
ここから新しい上昇波動が始まっていますから、日経平均は下げたら買いという状況です。
この上昇の要因となっているのが、以前に予想した通り、第1に23年4月から始まった本格的な賃上げです。日本では各分野で労働力不足が顕著になっており、賃上げせざるを得ない状況です。
第2に、22年に一時1ドル=150円台を付けた円安です。足元でも130円台で推移していますが、これによってインバウンド(訪日外国人観光客)がさらに拡大します。
そして日本経済はいよいよデフレを脱却して、適度なインフレ、物価目標2%を目指すことになり、株価も上昇します。
岸田政権の政策の柱となるのは、少子高齢化が進む中、デジタル革命の推進です。これは安倍政権、菅政権から引き継がれている政策です。もう1つは地政学リスクが高まる中、防衛力の強化です。
その状況の中で、現在のところ岸田政権は「アベノミクス」に近い形の政策を進めています。資産インフレで今後、バリュー株もグロース株も株価が底上げされ、日経平均は1989年末の最高値、3万8915円を目指す動きが始まります。
国内のリスクとしては、岸田政権がどこかで増税路線に入ることです。財務省主導による増税、これは株価急落、景気悪化につながりかねません。
海外要因では日本と中国の関係です。今も中国で活動している日本の大企業は多いわけですが、ロシア・ウクライナ戦争の中で中国はロシア寄りの姿勢を見せています。欧米側にいる日本との間で今後、軋轢が強まる恐れがあります。
中国リスクが高まる中、足元で岸田首相が韓国との関係を改善したのは大きいと思います。中国を敵に回さないようにしながら、つかず離れずの関係を続けることができるかが今後の日本の政治経済のカギを握ります。
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