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シブサワ・アンド・カンパニー・渋澤健代表取締役「見えない価値」を表現する 「インパクト」による成長産業

財界オンライン / 2023年6月14日 15時0分

既存の財務諸表では数値化できない「見えない価値」を企業はいかに表現するか─。経済的リターンと同時に、社会的・環境的にポジティブな課題解決を意図とする「インパクト投資」市場が急成長しています。

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「インパクト投資」という用語自体は2007年頃にロックフェラー財団が主導し、命名しました。社会課題を解決するベンチャー企業への投資機運醸成の必要性が訴えられたのです。この流れを13年のG8議長国であった英国が推し、英有力投資家で慈善家のロナルド・コーエン氏が「インパクト投資の父」として存在感を示しました。

 企業の非財務的な価値の可視化を促し、投資判断とする「ESG投資」が資本市場の常識になりつつあるころ、コーエン氏は「インパクト」という概念を「ポストESG」として推しました。

 インパクト投資に関するグローバルなネットワークGIINによると、世界のインパクト投資市場は21年に初めて1兆米ドルを突破。19年比で2倍以上の規模となっています。

 インパクト投資は経済的投資が能動的に社会的・環境的な課題解決も目的としているという点で、企業が受け身になりがちなESG投資と異なります。

 しかしながら、環境・社会の課題解決への取り組みは企業の経済活動とは別物の外部不経済として扱われることが多く、企業価値の向上につながっていないという考えが主でした。

 一方、課題解決によって生まれた効果を、客観的な数値を基に可視化することで、目標設定および達成が算出できる、つまり、そこに価値があるという考えが「インパクト」です。

 また、インパクト投資から派生している動きもあります。それがインパクトを企業会計に落とし込む「インパクト加重会計」です。現在では試験的な考えに留まっています。ただ、課題解決の価値を企業会計に反映させることができれば大きなゲームチェンジになります。

 従来の企業会計の枠組みの中で、インパクトを表現することは困難であることは間違いありません。ただ企業のビジネスモデルが社会の変化に合わせて進化するように、企業会計の世界も時代の変化に合わせて進化をしなければなりません。

「企業の価値は時価総額や経済活動だけでは全てを評価できない」。そう思っている日本の企業経営者は少なくないでしょう。また、日本の商習慣を表す言葉に「三方よし」があります。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の考え方です。しかしこのうち社会の役に立っているという「世間よし」を客観的に測定する指標はありません。ここが曖昧なままでは世界に通じる考え方にはなり得ません。

 この「世間よし」をインパクトとして測定可能な事業領域はあるのか。私は「グローバルヘルス」という分野に大きな期待を持っています。日本は少子化・高齢化が進みますが、世界の人口は増加の一途を辿る一方、医療のアクセス等が貧弱なグローバルサウスの多くの国々が存在しています。一国の繁栄は人的資本の向上が不可欠であり、その根底に「健康」があります。

 また「健康」とは、科学的根拠によって数値化できますし、「健康」の課題解決は世界の人々にとって価値があるものです。つまり、グローバルヘルスにおけるインパクトとは世界に通じる「共通言語」になり得るのです。

 よって、ヘルスケアの技術やサービスに一日の長がある日本企業にとって、グローバルヘルスは世界的規模のインパクトある成長分野なのです。

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