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危機は続くが産業人・経営者の士気は高い!【私の雑記帳】

財界オンライン / 2023年6月18日 11時30分

似鳥昭雄さんの開拓者魂

 コロナ禍は、ひと山を越えたが、ウクライナ危機はまだ続く。日本国内は人口減、少子化・高齢化や財政難が加わり、先行きはとても楽観できる状況ではない。

 救われるのは、産業人・経営者の士気が高いことだ。

「人々の生活を豊かにすることに貢献したい」という夢を持って23歳の時に起業した似鳥昭雄さん(1944年=昭和19年生まれ)もその1人。

 似鳥さんは旧樺太(現サハリン)生まれで、生まれて間もなくの終戦直前に、母親に抱かれ北海道に引き上げてきたのだが、実に開拓者魂の旺盛な人。

「人のやらないことをやる」のが信条。家具店から出発し、札幌で店を始めた当初は、「自分は口下手だし、ドモリがち。店頭での販売は全部女房がやりました」と語る。本人は商品の仕入れに奔走。

 夫婦2人で協力しながらの起業だったが、こうしたらお客様は喜ぶのではないか─という視点に徹し、商品開発を進めてきた。

 問屋を介さず、産地を直接訪ねて仕入れるというやり方だから、業界関係者からは睨まれた。

 津軽海峡を越えて、青森など東北地方に仕入れに行くにも、常に〝妨害〟が入り、最後には九州・大川(福岡県)にまで足を運んだというのも昔の話。

 そうやって、いろいろな事を体験し、今では海外に自前の工場を持ち、SPA(製造小売業)という形態を家具・ホームファッション分野で構築した。

 何事も、諦めない。自分の夢を果たすまで走り続けるという似鳥さんの踏ん張りである。


チャンスはいくらでも

 その似鳥さんは、日本の市場で生き抜くためには、「シェアを増やすか、人のやらない事をやる。そうやっていけば生き抜けるし、日本にも成長するチャンスはいくらでもあります」と強調。

〝本業〟の家具は今や、全売り上げの33%しかない。ホーム(家)関連の商品開発を進め、扱う商品も増えてきた。家電販売チェーンのエディオンと提携するなど、関係する企業群も増えている。

 今、日本の家計は子供の教育費負担などで厳しい状況。

「大学生が1人いると、4年間で1千万は必要ですからね。子供2人となると大変な負担」と、日本の現状をどう改革し、将来をどう設計していくのかにも、似鳥さんの関心は高まる。

 そうした状況の下、似鳥さんは中長期視点で、今後のニトリホールディングスの経営を考える。

 アジアの成長の取り込みはもちろんのこと、「30年後の自分たちの夢、計画を立て、そこから逆算して、今、何をやるべきかという発想です」と似鳥さん。

 2023年3月期まで、36期連続の増収増益(経常利益ベース)を達成。これからも成長路線を実行していくと、士気は高い。


新日本科学の挑戦

 米中対立などの〝デカップリング〟(分離)の話が強調されがちだが、経営の領域ではグローバルという視点が益々強まっている。

 新薬開発に欠かせないCRO(臨床試験受託)業務。その中でも前臨床試験受託で最大手の新日本科学。1973年(昭和48年)5月設立で今年50周年を迎えた。父親の跡を受け継いで社長を務める永田良一さん(1958年生まれ)は米国でもCRO事業を手がけるなど、グローバルな視点を持つ経営者だ。

 CROという業務は、新薬開発を進める製薬企業から仕事を受託するわけだが、その開発中の新薬が本当に効果を発揮するのかどうかを治験で確認する。

 以前は、製薬企業が自ら治験を手がけていたが、新薬開発は巨額の研究開発費用と歳月を要する。治験も専門の企業に任せたほうが効率的ということで、CRO業務が注目されるようになった。

「この業務は、政府が認定した機関でないとできませんし、法令の下で動きます。創薬の仕事も複雑化してきましたし、(治験も)アウトソースしたほうがいいということで、そういう風が吹き始めたのが1990年代ですね」

 永田さんが社長に就任したのは1991年。父親の代にこの業務が始めたが、その時から数えると65年が経つ。

「この65年の間で培ってきた技術とか、組織力を活かして、新しい課題にもどんどん対応できるようになりました」と永田さん。

 人の命を守る新薬開発の舞台裏で、長い間、関係者の努力が続けられ、人と人のつながりで、治験の仕組みが築かれてきたということである。


グローバル対話を欠かさず

 新薬開発は、国と国を超えて関係者が集まり、手を携えて進めていく。新日本科学は、米国の大手CRO、PPD社から「ジョイント・ベンチャーを一緒にやらないか」と提案を受け、以来、関係が続く。

 また、永田さん自身、米国に進出し、CROを手がけ、米国内での独自の基盤を構築。

 視点は、「世界を相手にする仕事」、つまり国際共同治験である。

「グローバルスタディというんですけど、これは世界で一気に臨床試験をやるんですよ」と永田さん。

 PPDは世界50か国でそうした仕事を手がけてきた実績を持つ巨大組織。そういう相手と提携しての同社の業務展開。

 PPDは米ノースカロライナを本拠に、ロンドン、マドリッドと世界の主要都市に拠点を構える。

 そうした世界各地に散らばる幹部と毎月1回、WEBで会議を開催している。

「毎回2時間位、英語でのやり取りです。ご飯はもう午後8時までに食べないといけない。いつも美味しいビールも飲めないし、ワインも飲めないんですが、話が盛り上がるのが楽しみです」という永田さんである。


南青山に〝小山〟を!

 東京に〝青い小山〟を─。

 洒落たファッション店などが建ち並ぶ東京・港区南青山に、緑あふれる小山をつくろう─という考えを打ち出すのは、東英弥さん(1952年=昭和27年生まれ)。

 社会人教育の大学院、事業構想大学院と社会構想大学院を経営する東さん。宣伝広告に関する雑誌『宣伝会議』などの事業でも存在感を示してきた東さんだが、今回、南青山に小高い山をつくるという構想にはビックリさせられる。

 なぜ、南青山に山なのか?

「明治神宮から表参道を経て、根津美術館まで歩くコースは、この辺りを散策する人にとって人気があるんですが、途中でホッとする所がないんですよ」

 事業構想大学院の隣にはUR都市機構の空き地があり、協力して「表参道に青山」をつくりたいのだという。

 同構想が正式に実現するかどうかは、UR所有地がどう活用されていくかにもよるが、東京のど真ん中に小山をつくる─という発想が面白い。

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