【新しい法制下での不動産ビジネス】相続による共有登記は要注意
財界オンライン / 2023年6月20日 7時0分
(不動産会社開発事業部長Q氏)
弊社は、都内とその周辺地域にオフィスビルや住宅のための用地の取得を推進しており、特に空き家の土地建物を広く取得していきたいと考えています。困るのは、空き家の土地建物が相続人の共有で、その中に行方不明の人がいたりして、売却が困難なことです。こうした場合でも、売却してもらえるよう法整備されたとの話を聞きましたが、どのような法整備でしょうか。
(弁護士A氏) 前回までのお話しは、空き家の土地建物の共有者の中に行方不明者がいる場合は、その人の共有持分を勝手に売却処分することは、個人の財産権の保障の趣旨から法律上高いハードルがありましたが、令和5年4月1日から施行された民法改正法により現実的に可能となったことです。
民法改正法によれば、不動産の共有者が、行方不明者の共有持分を含む共有不動産全体を売却希望者に売却したいときは、裁判所に申立てをします。裁判手続では、共有者が行方不明であることを郵便の出状記録や調査報告などをもって立証し、また、共有者らが行方不明者の共有持分を含む不動産全体を貴社など買受希望者に売却する事前の合意を前提に、裁判所が、適正な代金額の算定を不動産鑑定士に委嘱して判断し、裁判所が認めれば、申立人=共有者に対し、行方不明者の共有持分を、他の共有者の共有持分と共に買受希望者に売却できる権限が付与されることとなります。
しかし、相続を原因とする共有登記の場合は要注意です。相続開始後に遺産分割をしない法定相続のままの状態で相続分に応じて共有登記されている場合が少なからずあります。この場合は、前記のような裁判所の決定で行方不明者の共有持分の売却権限を付与するという制度の適用はありません。相続人間で遺産分割をした上で共有とした場合には、通常の共有の場合として、前記の裁判所の決定による売却権限付与の制度の適用が認められます。しかし、遺産分割をしないで法定相続のままでの相続登記であれば、相続開始から10年経過しない間は相続人間の遺産分割の機会を与えるべく、裁判所の決定による売却権限付与の制度の適用は認められません。これに対して相続開始から10年経過した場合は、遺産分割と言っても一律に法定相続分を基準とすべきものとされ、法定相続分による共有を前提として、前記の裁判制度の利用が可能となります。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
不動産の「相続登記」と「名義変更」の違いは?…相続で名義変更を怠った場合の主な“3つのリスク”【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月26日 11時30分
-
《遺産相続》5人に1人がトラブル、“親の最期”でもめないためには「遺言書を書いてもらうこと」
週刊女性PRIME / 2024年11月24日 6時0分
-
3年前に「実家」を相続したけど、家の「相続登記」をしていません。放置すると「10万円」払う必要があると聞いたけど、今すぐ手続きすれば問題ない?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月22日 5時20分
-
親が亡くなりました。親の遺産に不動産があるのですが、不動産は相続のときにトラブルになりやすいと聞きます。どのようなリスクがあるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月16日 23時0分
-
無効になるリスクも…相続放棄前後に“やってはいけないこと”とは?避けるべき行為をしてしまった場合の「3つの対処法」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月14日 10時15分
ランキング
-
1お父さん、ちょっとアフリカに行ってくる…〈60歳定年で退職金2,500万円〉〈65歳で年金月19万円〉、堅実に生きてきた55歳父が突然の早期退職。仰天行動に家族が絶句「うっ、うそでしょ⁉」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月28日 5時15分
-
2車載電池向け電解銅箔メーカー、日本電解(株)(茨城)が民事再生、今年初めての上場企業倒産
東京商工リサーチ / 2024年11月27日 20時40分
-
3円上昇、一時150円45銭 1カ月ぶり円高ドル安水準
共同通信 / 2024年11月28日 7時45分
-
4トヨタの世界販売台数、10月として過去最高…国内生産は前年の反動で8・3%増
読売新聞 / 2024年11月28日 13時30分
-
5大失速の日産「ゴーンの呪い」いまだ抜け出せず? V字回復に向けた急務とは
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月28日 5時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください