【東工大と東京医科歯科大の統合】 突き動かしたのは両トップの〝危機感〟
財界オンライン / 2023年7月3日 7時0分
日本の半導体産業の衰退
「東京工業大学は1881年の設立時から『人を作って新しい産業を興す』と謳っていたのに、何も新しい産業を興していない。急速に変化する世界の中で、一向に変わらない自らへの危機感が募った」
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東京工業大学学長の益 一哉氏は、東京医科歯科大学との統合を決断した背景をこのように明らかにした。
両校は2024年度の統合を目指しており、新大学の名称を「東京科学大学」とする方針を固めた。国立大が統合して新たな名称となるのは、03年に東京商船大学と東京水産大学が統合して誕生した東京海洋大学以来だ。
益氏はもともと半導体を専門とする研究者。日本の半導体産業が1998年に世界シェアの約6割を占める産業になっていたが、日本が「失われた30年」と言われたように、日本の半導体産業自体も30年間で存在感を失った。益氏は「東北大学に18年間勤め、東工大でも18年間教授として研究を行ってきたが、そのことがずっと気にかかっていた」と話す。
そして2018年に学長に就任し、「新産業を興すために挑戦できる人材を育てる」ことを東工大のミッションと考えていた益氏。そんな折、東京医科歯科大学学長の田中雄二郎氏から統合の提案を受けた。当初は「自分たちで何とかしようと思っていた」という益氏だったが、「本気で世界に打って出るのなら、他分野の大学と協働するべきなのかもしれない」と思い始めたことで統合へと動き出した。
工学系と医学系の分野は重ならず、医工連携の推進が強みになる両大学の統合。「自由でフラットな組織を構築する」と語る益氏。両トップの危機感と覚悟が日本の大学の成功モデルになるかどうかが試される。
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