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AZ-COM丸和ホールディングス社長・和佐見勝「3つの幸せを実現するため、4つの事業の柱で物流ビジネスを成長させていきたい!」

財界オンライン / 2023年7月5日 7時0分

和佐見勝・AZ-COM丸和ホールディングス社長(丸和運輸機関社長)

第51期のスローガンは「氣宇壮大」─。1970年にトラック1台で創業して五十余年。昨年10月1日付で発足した純粋持ち株会社のAZ-COM丸和ホールディングス社長の和佐見勝氏は次の50年に向けた意気込みを語る。物流業界は人手不足や燃料コストの上昇など経営環境に厳しさが増す。自力の成長とM&Aの展開で新たな成長を目指す和佐見氏。その成長の根底には和佐見氏の創業以来の経営思想があった。

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 ─ 創業50年を機に社名変更を決断。半年余りが経ちましたが、社員にはどんなメッセージを伝えているのですか。

 和佐見 第51期の経営スローガンとして掲げているのが「氣宇壮大」です。最大の真価を発揮し、「ハピネス経営」を実現しようと呼びかけています。氣宇壮大とは心意気や発想が人並み外れて大きい様子を指しますが、こういった人には他者を惹きつける魅力があります。社員にはまさに器の大きな人間になって欲しいと思っています。

 私自身、1970年にトラック1台で創業して約50年間、イトーヨーカ堂やダスキン、マツモトキヨシ、米大手eコマース事業者などとの取引を通じて売上高1000億円を超える規模にまで成長させました。

 直近でも2022年3月期売上高で1330億円、経常利益で91億円に対し、23年3月期は売上高1778億円、経常利益119億円と増収増益。そして24年3月期は売上高2000億円、経常利益140億円を目指しています。

 AZ-COM丸和グループとしての大きな目標を掲げることによって社員にも夢を持ってもらいたい。ですから中期経営計画の最終年度に当たる25年3月期の売上高2400億円、経常利益175億円を達成していきます。もちろん、この数値目標は社員の息が切れないレベルに落とし込んであります。

 ─ ここにはM&Aも含まれているのですか。

 和佐見 いいえ。あくまでも自力で伸ばしていく数字になります。そして24年は当社が東証2部(当時)に上場して10年となりますが、上場した時に社員持株会をつくり、社員には入ってもらうように言っていました。上場してから5回、株式の分割も行いました。

 この根底には私が創業以来、掲げてきた「幸福企業づくり」言い換えると「ハピネス経営」における3つの幸せがあります。1つ目が「考働的幸せ」、2つ目が「経済的幸せ」、そして3つ目が「家族的幸せ」です。

 ─ 具体的には?

 和佐見 考働的幸せとは、考えて働くことです。仕事があって働けることが幸せなんだということを意味しています。次に経済的幸せとは、給料があって賞与もあり、その他にも成果配分があって、社員持株会も金銭的なインセンティブになりますからね。最後の家族的幸せとは、仕事で家を出るときに家族から「頑張って」と声をかけてもらえる。そういった声をかけてもらえる幸せです。活力ある職場は明るい家庭から始まります。

 ─ 社員の士気向上にもつながりますね。実際にどんな戦略で成長を目指しますか。

 和佐見 当社には大きく分けて4つの事業の核があります。「EC(電子商取引)物流」「低温食品物流」「医薬・医療物流」、そして「BCP(事業継続計画)物流事業」です。

 まずEC物流にはラストワンマイルの宅配を担う事業があり、これに加えて物流センター間を結ぶ幹線輸送もあります。eコマースは今後も増えていくことが予想されますが、より細かな対応が求められるようになります。

 eコマースによって、ある拠点から全国へと商品を販売することができるようになったことで、物流も首都圏から地方、あるいは地方から首都圏へと運ぶために各所で在庫を持たなければならなくなりました。

 そこで当社では、物流センターから物流センターへの商品の輸送も行っています。今後もこの幹線輸送が増えていくと思いますので、ここにしっかり対応していきたいと思っています。

 ─ 一方でエリアも小さく、細かな物流も増えそうですね。

 和佐見 その通りです。当社は物流センターの運営管理も手がけています。この事業も我々の得意な領域になります。大手ドラッグストアの物流は物流センターの運営も店舗への配送も一括して当社が担っています。

 このように宅配、幹線輸送、物流センター運営まで一貫物流という形で物流領域をトータルで管理することができるところが当社の大きな強みになっているのです。これがEC物流でも大きな力を発揮しています。

 ─ M&Aした企業もその強みを生かすものなのですか。

 和佐見 その通りです。例えば2020年に株式を100%取得して完全子会社化した「日本物流開発」という会社は物流加工業務で高い評価を受けていますし、22年に当社グループの一員となったECソリューションサービス事業を手がけるファイズホールディングスもEC通販の商品管理からスタッフ派遣、配送まで包括的なサービスを提供できる企業として存在感のある会社です。

 さらに同じ年には物流会社のM・Kロジという会社を完全子会社化しました。M・Kロジも主にECで消費者に直接商品を売るダイレクト・ツー・コンシューマー事業者を顧客にしているため、高品質な設備により発揮される高い生産性があります。

 同社は福岡県の会社なのですが、九州はもともと「ネット王国」と呼ばれるほどeコマースが全国でも盛んでした。取引先にも九州を拠点とする健康食品メーカーや化粧品メーカー、医療品メーカーなどが多く、そこのEC物流の多くをM・Kロジが担っているわけです。

 ─ 次に低温食品物流に関する今後の戦略とは?

 和佐見 この物流のお客様はスーパーマーケットになります。これは今後も積極的に展開していきます。そのための商品メニューが「7PL」というものです。3PLとは取引先の物流業務を一括して受託するビジネスを指しますが、食品物流の場合は7つの項目を提案する「7PL」というサービスを提供しています。

 7つの項目はいずれもお客様の課題を解決し、改善につなげるものなのですが、これはもともと私が八百屋を経営していたときに課題認識として持っていたことが原点になります。

 ─ 丸和と手を組めばスーパーの経営も改善するわけですね。

 和佐見 はい。特に当社と取引したスーパーは産直の強さを発揮しているケースが多い。今は市場で生鮮食品を調達することが難しい時代になりつつあります。一方で注目されているのが産地買い付けです。そこで当社はスーパーのバイヤーと産地の生産者をつなぎ、輸配送のお手伝いをしています。

 その際、当社はクールコンテナを使用します。低温での温度管理ができる当社のコンテナは遠隔操作で鉄道輸送中の温度管理も徹底しているのです。温度管理ができれば野菜などの温度管理が重要な商材を新鮮なまま運んでこれます。

 ─ どのような事例がありますか。

 和佐見 2年前から北海道の帯広市で収穫したトウモロコシを産地直送する取り組みを始めました。朝4時に帯広で収穫されたトウモロコシを千歳空港まで運び、そこから貨物航空便を手掛けるANAカーゴで羽田空港や伊丹空港まで運ぶ。そして空港から各店舗まで当社のトラックで運ぶのです。

 要は収穫した当日の夕方には首都圏などの店頭にトウモロコシが並ぶ形になりますから消費者は喜びますね。そういったスピードデリバリーがスーパーの販売にもプラスに働くわけです。こういった提案をすると、皆さん魅力的に感じてくれます。

 最近では熊本大同青果さんと生鮮食料品の流通で業務提携しました。同社は提携している生産者さんからの青果物の仕入れに加え、自社で農場を持っており、野菜づくりも手がけています。そこで同社が生産、または仕入れた野菜を当社が東京に運んでくるわけです。もちろん、熊本大同青果さんが強みを持つエリアは当然のこと、関西エリアにも運んだりしています。

 ─ 各地の生産業者とも組めるということですね。

 和佐見 そうです。ですから今後もこれをもっと拡大させていきたいと思っています。既に全国19産地を開拓済みで、これを23年には30産地、そして25年には47都道府県で提供していきたいと計画しています。

 また年間を通してお客様に旬な青果物を提供できる「産地リレー」も広げていきます。22年は8社、195店舗に8万本のトウモロコシとアスパラガスを提供しましたが、これを25年には20社、500店舗に25万本届けたいと思っています。

 そのための設備投資も進めています。現在、埼玉県の松伏町に大型物流センターを建設中なのですが、ここは日本で最大級の低温食品を専門としたコールド・チェーンの物流センターにしたいと思っているのです。

 これができればコールド・チェーンのモデルとして国内外の方々にも実際に見学していただくことができ、自分たちのビジネスに役立ててもらえるのではないかと思っています。

 ─ 生鮮産品も生産地から直接消費地に届ける時代に変わったと言えますね。

 和佐見 そう思います。スーパーも市場で品揃えができない時代になりました。というのも、スーパーのバイヤーがわざわざ市場まで足を運ぶ時代ではなくなり、デジタル端末で発注するようになったからです。一方、注文した商品が店舗に到着するまでの日数は余分にかかってしまうようになりました。せっかく生産者が心を込めてつくったのに、新鮮な状態で消費者の下に届かないのは本当にもったいないです。

 そこで私たちは当日か、遅くても翌日には店頭に運べるような物流網を整えたいと。非常に大変なことなのですが、それが他ではできない当社の差別化要素になります。鮮度を維持することができるというのは当社の大きな強みになっています。

 ─ ある意味、丸和が仲介役になっていると。

 和佐見 そうとも言えますね。我々が集荷と配送機能をもって生産地まで取りに行くわけですからね。市場は別に自分たちが生産地に行かなくても、生産者が市場まで持ってきてくれていたわけです。しかし今は持ってくる人がいません。ご存知のとおり、ドライバーも不足していますからね。

 さらに農業従事者の高齢化もどんどん進んでいます。それに対応して北海道でも農業が機械化され、手作業はだいぶ減ってきていますが、結局は生産してもそれを市場まで運ぶ運び手がいなければなりません。それで今は収穫したものが店頭に並ぶまで3日もかかってしまう。

 そこを我々が代行していきましょうと。今までの物流の時間軸を大幅に改善、改革するということです。特段、市場とも競争するわけではありません。そもそも市場にはこのようなことができないからです。

 ─ 「EC物流」も「低温食品物流」も、これからの市場拡大が望める有望な市場と言えますね。次回は「医薬・医療物流」と「BCP物流事業」についての戦略を聞かせてください。(次回に続く)

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