【農林水産省】食料安全保障が前面に 農業・水産白書を閣議決定
財界オンライン / 2023年6月29日 15時0分
政府は食料や食事に関わる農業、水産、食育の各白書の22年度版を閣議決定した。各白書とも冒頭で食料安全保障をテーマに据える異例の構成だ。
ロシアによるウクライナ侵攻で世界的に食料価格が高騰。食料だけでなく、肥料原料や飼料作物を輸入に頼る日本にとっても対岸の火事ではないことが認識された。政府は昨年、食料安全保障強化政策大綱を策定しており、食料安全保障強化はもはや国策となった。
農業白書は、日本が「将来にわたって食料を安定的に供給していくためのターニングポイントを迎えている」と宣言。「生産資材や原材料の価格高騰は、生産者・食品企業の経営コストの増加に直結し、最終商品の販売価格まで適切に転嫁できなければ、食料安定供給の基盤自体を弱体化させかねない」とし、コスト上昇分を適切に価格転嫁する必要性を訴えた。
一方、水産白書は、タラの卵やイクラ、ウニなど特定の品目で国内消費に占めるロシアからの輸入割合が大きいことを挙げ、「水産物の安定供給が脅かされるリスク」が顕在化したと強調。「ロシアを始めとする諸外国との関わりが食料安全保障上大きな要因となることを改めて浮き彫りにした」として、輸入元の多角化や国内の漁獲量増加の重要性を指摘した。
さらに食育白書は初めて食育における食料安全保障を採り上げた。農林水産相の野村哲郎氏は記者会見で「いつでも食料を安く輸入することができないことが明らかになる中で、多くの国民が農業や食料消費の実態について理解を深めることが食料安全保障を考えるきっかけになる」と意義を説明した。
自民党農林族の会合も食料安全保障一色となっており、ある農水省OBは「言葉は踊っているが、中身はなく、危機感を煽って予算を獲得する狙いだ」と冷めた視線を投げかけている。
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