【経済産業省】石油元売り各社に「SAF」の供給義務付けへ
財界オンライン / 2023年6月30日 11時30分
経済産業省は5月下旬、30年からジェット燃料の少なくとも10%を二酸化炭素(CO2)排出量が少ない「持続可能な航空燃料(SAF)」で供給するよう石油元売り各社に義務付ける方針を打ち出した。航空会社が国内で安定的にSAFを確保できる環境を整備する狙いだ。ただ、コスト低減との両立が課題となる。
廃食油や植物などを原料とするSAFは、従来燃料よりCO2排出量を6~8割抑えられるとされる。国際民間航空機関(ICAO)が定めた削減目標達成に不可欠な燃料で、ANAホールディングスや日本航空は30年度に消費燃料の10%をSAFに転換する目標を掲げている。政府は、海外航空会社への供給分と合わせ、国内で30年に171万キロリットルの需要があると見込む。
しかし、世界のSAF供給量は22年時点で約30万キロリットル。前年の3倍に急増したが、世界のジェット燃料供給量の1%にも満たない。SAF争奪戦の様相が高まる中、国内の供給体制整備は急務となっている。経産省の新規制では、エネルギー供給構造高度化法に基づき石油元売りなどに10%のSAF供給を義務付け。罰則も設ける方向で、供給側に早急な対応を迫る。
一方、購入する側の航空業界は供給義務化を歓迎しつつ、「価格低減もセットじゃないと困る」(関係者)と釘を刺す。昨年公表の国の資料によると、SAF製造コストは従来燃料の2〜16倍。高価格も普及への壁となっているのが現状だ。
このため経産省は、海外での原料開発への資金支援や海外生産SAFへの輸入関税や石油石炭税減免なども検討。コスト低減を図る考えだが、米欧は手厚い税制優遇や補助金を導入済み。
米国では国内生産のSAF価格は実質的に従来燃料並みになるとも言われており、出遅れ感は否めない。経産省は「石油元売りが作っても(高額で)売れないということにはならない」(担当者)との認識だが、海外より燃料コストが高ければ日本の航空会社の競争力低下や航空券価格上昇につながる恐れもあり、不安は拭えない。
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