【著者に聞く】『M&A経営論 ビジネスモデル革新の成功法則』学研ホールディングス社長・宮原博昭
財界オンライン / 2023年6月25日 11時30分
創業の精神を大事にし、ステークホルダーに納得してもらえる経営を
学研という会社をつぶしたくない─。
この一心で社長に就任したのが、2010年の12月。当時の学研は2006年度から4期連続の営業赤字。歴史ある学習雑誌『学習』と『科学』を休刊し、屋台骨を失った学研はもう潰れるだろうと言われていた中での社長就任でした。
少子高齢化が進む日本にあって、書店雑誌中心の経営では長期的な成長が見込めません。そこで当社では積極的なM&A戦略によって、教育や医療福祉といった新たな事業分野を開拓。結果として、2022年9月期まで13期連続増収、8期連続増益のV字回復を果たすことができました。
当社のM&Aは例えば教育分野では、〝人・教材・場所〟の3つの視点で中長期的な目標に向かって成長していくために欠けているパーツを探し、パートナーを見つけていきます。
わたしはM&Aを買収という言い方はしません。株主が変わり、創業者や経営者が変われば、社員は不安に感じるもの。株を買い占めて、会社を支配する支配者のようなイメージで受け止められると困るので、「グループイン」という言い方をしています。M&Aする会社の株をお預かりすることで、当社グループの仲間になってもらうという考えがあるからです。
中には株を買ってやる、自分たちが再建してやるからツベコベ言わずついてこいという態度で接する会社や経営者が存在するのも事実です。しかし、それでは上手くいきません。
M&Aした会社が長く成長し続けるには、創業の精神を大事にし、そこで働く社員や取引先、株主などのステークホルダーに納得してもらえるような経営をすることが大事なのです。
世の中にはM&Aに関する解説書は沢山ありますが、座学と実際の経営は全く異なるものです。本書ではM&Aを成功させるには17の原則があるとお伝えしました。わたしの経験が少しでも皆様の経営の参考になり、日本経済が活性化する一助になれば幸いです。
【わたしの一冊】『選択できる未来をつくる』パナソニックのスーパーウーマン
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