約1兆円赤字のソフトバンクG 孫正義氏が「反転攻勢」宣言
財界オンライン / 2023年7月5日 18時0分
「2兆円、3兆円の上下は誤差のうち」
「『大赤字を出し、恥ずかしくて引っ込んでいるのではないか』という説もあるようだが、実は忙しく楽しくやっている」
6月21日、ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は、定時株主総会でこう語った。SBGのトップとして公の場に出たのは、約半年ぶりのことだった。
孫氏は2022年11月の決算会見で「(傘下の英半導体設計)アームの成長に没頭する」と述べ、当面、決算の説明は後藤芳光取締役専務執行役員に任せる意向を示していた。
22年度のSBGは、世界的なインフレや金利上昇の影響で、新興企業に投資する「ビジョン・ファンド(SVF)」事業が苦戦。〝虎の子〟だった中国IT大手アリババ集団の株式の大部分を手放すなどして財務基盤の改善に務めたものの、23年3月期連結決算(国際会計基準)の最終損益は9701億円の赤字に沈んだ(22年3月期は1兆7080億円の赤字)。
だが、株主総会で孫氏は、〝守り〟の経営によって、手元に5兆円超の現預金を確保したことを説明した上で、「いよいよ反転攻勢の時期が近づいている」と宣言。「グループを挙げて人工知能(AI)革命の先端を担いたい」と意気込んだ。
孫氏は、自身が米オープンAIの生成AI「チャットGPT」を日常的に使っていることを明らかにした他、生成AIを活用した事業アイデアのコンテストをグループ企業で実施していると紹介。AIの進化の中核に英アームがいるとして、「爆発的成長期の入り口に入った」と豪語した。
他方、自身の去就については「ワクワクしすぎて、引退したくない。もうちょっとやりたい」と述べ、後継者問題が棚上げされている状況が改めて浮き彫りになった。業績に関しても「2兆、3兆円の上下は誤差のうちだ」としており、積極投資を再開することで浮き沈みが激しさを増すことは必至だ。
生成AIを巡っては開発競争が激化している一方、セキュリティーや著作権などの観点から規制が強まる可能性もある。リスク管理を含め、苦戦が続く孫氏のかじ取りが試される。
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