原材料高や円安などの逆風下で真価が問われるニトリHD
財界オンライン / 2023年7月6日 15時0分
今後は海外の成長を取り込む
「これまで大体10年に一度くらい大きな不景気があったが、ほぼ難なく乗り切ることができた。今回のような、極端で、急激な変化は初めてで、対応することが難しかった」と語るのは、ニトリホールディングス(HD)会長の似鳥昭雄氏。
ニトリHDの2023年3月期の連結業績は、売上高9480億円(前年同期比16.8%増)、経常利益1440億円(同1.6%増)と増収増益だったものの、特別損失の計上により、純利益は951億円(同1.6%減)と実に24年ぶりに減益になった。
同社は決算期を変更しており、23年3月期は22年2月から23年3月末まで13カ月余の変則決算だった。
事業環境変化の主要因は、コロナ禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた市場の混乱だ。原材料やエネルギー価格、輸送コスト等が軒並み上昇。同社の商品は約9割をコストの安い海外で生産しており、円安も業績に大きく響いた。
もっとも似鳥氏は今後、物流費などのコスト改革を進めるとした上で、「年末から来年にかけて米国の景気が悪くなると円安も少しは落ち着くと思う。円高になれば商品価格を少し下げていこう」と考えているようだ。
1967年に「似鳥家具店」を創業して55年余。同社は企画・製造・物流・販売・システム開発を一貫して行う「製造物流IT小売業」という独自のビジネスモデルを創出して成長してきた。扱う商品も祖業の家具は現在30%程度で、寝具や食器、家庭用品などのホームファッションが3分の2を占めるまでに幅広く拡大した。
近年は家電製品や大人の女性向けの衣料品開発にも注力しており、「時代の変化に合わせて、日々ビジネスモデルを進化させている」(似鳥氏)。
2023年3月末時点でグループの店舗数は902(国内773、海外129)で、今期は206店舗(国内129、海外77)を出店。3年後の2026年以降は海外の出店数の割合を多くし、毎年300店舗は出店するなど、海外の成長を取り込む考え。
このため、優秀な人材を獲得しようと、総合職社員の給与を20年連続でベースアップ。今年は平均5%賃上げし、若手社員は月給が最大5万6千円アップする。
「やはり、社員に報いないと、社員も新しいことをやる気にならない。うちの社員に必要なことは、改善ではなく改革。現状を否定して、どんどん改革してほしい」と語る似鳥氏。
原材料高や円安にどう対応し、今後の成長をどう実現していくか。今こそ似鳥氏の真価が問われている。
アイリスオーヤマ・大山健太郎の国内回帰論「国内にはまだ耕す場所がいっぱいある!」
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