【わたしの一冊】『悪党たちの中華帝国』時空を越えて変転する帝国リーダーの悩み
財界オンライン / 2023年7月8日 11時30分
「悪党たち」の中華帝国……時空を越えて変転する帝国リーダーの悩み
中国は過去も現在も支配地域の拡大と縮小を続けながらも、1400年間にわたって世界の大国であり続けて来た。本書は、この帝国の体質を独自の視点からえぐり出す。
本書で章立てされて、取り上げられる皇帝は唐の大宗、隋の煬帝、後周の世宗、明の永楽帝、万歴帝の5人にすぎない。
中華の外延モンゴル帝国(元)のクビライも清の西太后も主役ではない。むしろ思想家・政策家と呼ぶべき王安石、朱熹、明以降の王陽明、李卓吾、康有為、梁啓超に多くのページを割いている。
著者はこれらの中華の正統史観から排斥された異端の思想家を切り出す。プルターク英雄伝の筆法を以て、同時代を生きた「対となる悪党たち」を比較対象させ、中華帝国の実相をあぶり出す。
その一方で、著者の視線は「悪党」呼ばわりされた異端者に優しい。
結果が錯誤であったにせよ、時代の課題・要請に応じようとした試行に「悪党」という烙印を押し続けたのが中華帝国のメカニズムであったと喝破する。となれば、中華帝国の歴史は悪党達の列伝とならざるを得ない。
中華帝国は、民族的にも地域的にも変転極まりない多元・多層世界である。そこに統一と秩序の構築を求めるリーダーにとっては、試行錯誤と挫折の連続であった。
近現代においては、西洋との邂逅という新しい要素も加わった。毛沢東も蒋介石も、更には現在進行形の習近平も転変と蹉跌を免れることは出来ない。
それだけに、距離的に近く、文化的にも、経済的にも多大の影響と恩恵をこうむり続けていている日本は「悪党たち」の苦悩と中華帝国の本質を学ばなければならない。
東洋史で教えられた黄河流域の王朝別の列伝史では足りない。長江流域を飲み込み、現在に至る広域支配の中華帝国の本質を考えるための必須の1冊として、本書を推挙する。
【わたしの母校・山梨県立日川高校を語ろう】日本大学理事長 林 真理子
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