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【覆面座談会】日本の半導体戦略をどう構築するか

財界オンライン / 2023年7月11日 7時0分

写真はイメージ

岸田政権が「新しい資本主義」政策の中で、国内投資の拡大とサプライチェーン(供給網)の強靱化を打ち出した。その中心となるのが半導体。台湾積体電路製造(TSMC)やラピダスが相次ぎ、新工場建設を決める中で、日本の役割とは何か。半導体業界に詳しい3人による激しい議論─。


日本に油断があった

 ─ 経済安全保障という観点から、世界各国が半導体産業を強化しています。日本では北海道にラピダスが、熊本では台湾積体電路製造(TSMC)が新工場を建設する予定ですが、こうした動きをどのように捉えていますか。

 A 日本に半導体の集積地をつくることは大賛成です。特にラピダスは米IBMやベルギーの研究機関imec(アイメック)と提携することで研究開発面での遅れを取り戻しつつ、最先端のロジック半導体をつくろうとしている。日本には優秀な半導体製造装置メーカーや材料メーカーなどが多く、相乗効果も期待できますし、日本の中で有力な「シリコンアイランド」ができることを期待しています。

【経済産業省】半導体など税制・予算支援へ「世界に遜色ない水準」明記

 B わたしは政府の支援が遅すぎたように思う。ラピダスにしても、TSMCにしても、今からやろうとしているのは設計ではなく量産(製造)でしょ。大量につくった後にどうしたいのかという戦略が見えてこない。

 要するに、国の戦略がコロコロ変わり、一貫した戦略が無いんです。やり直すなら日米半導体協定による貿易規制が強まった30年くらい前から手を打つべきだったように思います。

 A 1990年代から日本の半導体は凋落していくわけですが、世界の半導体メーカーのトップ10に日本企業が6社も入っていたのだから、官も民もおごりや油断があったと思います。

 逆に、90年代後半から台湾、韓国、中国では政府がどんどん補助金を投入して、半導体産業を育成・強化していきました。しかし、日本企業や当時の通商産業省(現経済産業省)の中には、そんな簡単に追いついてはこないだろうという油断があったのではないでしょうか。

 C わたしも期待しているけど、ラピダスが目指すのは2ナノ(ナノは10億分の1メートル)の先端半導体の量産技術の確立です。現状、日本で製造できるのは40ナノの製品にとどまっていて、残念ながら日本は10年、20年遅れています。わたしはIBMの技術協力があっても、いきなり5年で追いつくなんてあり得ないと思います。

 B 米国では結局、製造は人件費の安い国でやればいいということで、自分たちは製造から設計やソフトウェアにシフトしていったわけですよね。ところが、日本は未だに1980年代の栄光が忘れられないのか、設計やデザインといったソフトウェアではなく、製造などのハードに注力する傾向にある。

 C わたしも日本はもっとソフトウェアやデザインに関心を持つべきではないかと。一定の生産規模が必要だとは言え、米国が稼いでいるのは開発や設計ですから、日本で開発や設計に対する戦略が一切見えてこないのは本当に不思議ですね。


半導体復活に向けた最後のチャンスだが…

 ─ では、国と企業それぞれの役割をどう考えるか。かつてエルピーダメモリには公的資金300億円が注入されたものの2012年に破綻しており、政府が関与するとうまくいかないという声も根強いです。

 A 昨今の米中対立を考えたら、世界的なサプライチェーン(供給網)を見直す上で、日本に半導体産業を誘致することは非常にいいこと。5兆円が必要だと言われるラピダスの新工場設立には更なる政府支援も必要になってくるでしょうし、課題はありながらも各国が半導体産業の囲い込みを行っている上では、日本政府の支援は必要で、日本も半導体復活に向けた最後のチャンスだと思います。

 とはいえ、わたしは国の関与はあっても、主導する必要はないと思います。民間企業の中で世界で戦える有力な企業だと思ったところに補助金を出していけばいい。これだけ時代の変化が早くなると、どうしても国の主導では判断のスピードが遅くなる。あくまでも主役は民間。民間を後方から支援することが国の役割だと思います。

 C 国が関与して成功した事例が少ないとはいえ、日本よりコストが安いと言って韓国や台湾に移っていったものを、国の経済安全保障という観点で日本に戻そうというのだから、国の補助は必要です。ただ、国も延々と補助金を出し続ける余裕はありません。

 国やラピダスがやるべきことは、半導体をつくった後にどこへ売っていくか。わたしは最先端の半導体が無ければつくれないような最終製品が一体どれだけあるのかが疑問です。

 B そこだよね。つくった後の戦略が見えてこない。米アップルのような巨大企業が最先端の半導体を使って、どういう最終製品をつくるかというところまで育てていかないと、半導体の需要が完全に確保されなくて、持続的な利益が出ず、国も延々と補助金を出し続けるしかなくなってしまうように思う。

 C エルピーダは政府の支援が遅すぎたと思います。エルピーダが誤算だったのは、主要顧客であった日本の電機メーカーが一気に凋落し、最終製品の作り手がいなくなってしまったことも大きいのではないか。

 その点、韓国サムスン電子は自社でテレビやスマートフォンなどの最終製品をつくり、しっかり半導体を使える場所を自らつくっていた。国が関与するのであれば、そこまでしっかり考えてほしいと思います。

 B もちろん、経済安全保障や供給網など、課題は山積しているが、官民ともに日本が本気でこれから半導体で世界と勝負していくのか、覚悟が求められているということだね。

「日米欧の国際連携で最先端の半導体を」ラピダス・小池淳義の決意

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