心と心の結びつきが人の「きずな」を強める!【私の雑記帳】
財界オンライン / 2023年7月17日 15時0分
インドネシアとの関係
心と心の結びつきがいかに人の契(きずな)を強めていくか─。
インドネシアを公式訪問されていた天皇、皇后両陛下は同国の独立に貢献した人たちが埋葬された墓地を訪れられ、供花された(6月20日)。
ジャカルタのカリバタ英雄墓地には、同国が先の大戦直後、旧宗主国のオランダから独立する時に戦った政治家や軍人、有志が眠る。
その中には旧日本兵も含まれている。1945年(昭和20年)に大戦は終わった。連合軍に降伏した日本だが、旧日本兵の中には戦後も現地に残留、インドネシア人と共に独立戦争を戦い抜いた人たちがいた。
その数は約1000人とも言われ、同墓地には独立戦争で命を落とした旧日本兵28人が眠る。
日本が連合軍に降伏した後、当時の旧オランダ領東インドはインドネシア共和国として独立を宣言。しかし、旧宗主国・オランダはこれを認めず、再植民地化へ乗り出す。そこで、同国とオランダの間で戦争が始まった。
いわゆるインドネシア独立戦争である。戦争は1945年から49年まで続いた。
このインドネシアの動きに同調した旧日本兵は帰国せず、義勇兵として独立戦争に参加し、命を落とす人たちも出た。
この事を、インドネシアの国民は忘れず、手厚く旧日本兵を葬ってくれた。
アラブ世界につなぐ
同国は人口約2億7000万人で、インドと並んで、世界の新興国を代表する国。資源も豊かで、経済の成長も近年著しい。
多島国家で、民族は約300にのぼり、ジャワ人、スンダ人、マレー系、アラブ系、インド系が共存。宗教はイスラム教が全体の86%を占め、キリスト教、ヒンズー教などが続く。
戦後の同国を率いたスカルノ大統領が大の日本びいきであったのも、自分たちと共に旧日本兵が独立戦争を戦ってくれた─という思いがあったからだ。
日本が敗戦から立ち直り、経済発展していく上で、石油などエネルギー資源確保のため、中東産油国との友好関係を築く必要があった。
〝アラビア太郎〟こと山下太郎がアラビア湾で開発利権を獲得し、カフジ油田を掘り当てるなど、先人たちは挑戦し続け、苦労した。
ある資源関係者は、アラブ世界との関係を築くために、「自分はインドネシアを通じて、サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)などとの関係をつくっていった」と筆者に語ってくれた。
当時、無資源国・日本の発展に石油資源は不可欠であったが、イスラム世界とは無縁だった日本が中東産油国との結び付きを深めるため、インドネシアの人たちに「お世話になった」とその資源関係者は語った。国と国、人と人のつながりである。
逆境の中で成長
日本は〝失われた30年〟と言われて久しい。
『昭和』の世が終わり、『平成』が始まったのは1989年。バブル経済がピークに達し、1990年代初めにバブルが崩壊、デフレに陥り、その後低迷期が続く。
しかし、この間に新しく企業を立ち上げ、勃興させた企業人、経済人もいる。『ユニクロ』(ファーストリテイリング)の柳井正さん(1949年=昭和24年生まれ)もその1人。
「逆境に生きる」─。柳井さんにしろ、ニトリホールディングス創業者の似鳥昭雄さん(1944年生まれ)、アイリスオーヤマを発展させた大山健太郎さん(1945年生まれ)にしろ、逆境の中で事業を発展させた企業人である。
柳井さんは家業の衣類販売店を父親から受け継いだのは1984年(昭和59年)、35歳の時。
石炭の街、山口県宇部市から出発し、「アパレルで日本1になる」と志を立てた。
商品を単に右から左に流すやり方では駄目と、SPA(製造小売業)の形態を開発。そこで、柳井さんは香港の華僑を通じて、中国で製造拠点づくりに進んだ。
柳井さんは、『LIFEWEAR』(究極の普段着)という経営理念を掲げ、質のいいものをそれなりの値段でと、カジュアル世界1を目指すと邁進。
当然、苦労が続いたが、『ユニクロ』が知られるようになるのは、1998年に東京・原宿に進出した時。その頃、日本はデフレが始まり、SPAで素材開発に注力してきた『ユニクロ』は、寒い時期に軽くて暖かい『フリース』で消費者の支持を獲得した。
さらに保温性のある『ヒートテック』を東レの技術陣と丁々発止の対話を重ねて開発するなど、挑戦が続いた。〝諦めない〟精神が逆境(デフレ)の中を生き抜く力となっていく。
環境変化の中を挑戦
『諸行無常』─。挑戦し続けてきた柳井さんが最近口にする言葉。
「あらゆるものが変わっていく。人間は死ぬんだと。死ぬのだったら、死ぬ前に何かやりたい」
また、「こういう事ができるという事に向かって努力する」とも柳井さんは言う。
『ユニクロ』も、またニトリもアイリスオーヤマも、〝失われた30年〟に伸びていった企業。3社に共通するのは、消費者を惹きつける商品の企画力。逆境も『人』を成長させる。
人口減、少子化・高齢化は続く。この中をどう生きるかという日本の課題である。
東京工業大の決断
年間の新生児が80万人を割ったということに衝撃が走る。
筆者は、いわゆる団塊の世代で、1947年(昭和22年)の生まれ。1947年から1949年までの間、年間270万人から280万人が生まれた。戦後発展のエネルギーはここから生まれたと思うのだが、今はその頃の3分の1しか誕生しない。
今の若い世代には将来への不安、先行き懸念があって、結婚を控え、あるいは結婚しても子供を産まないという動きにつながっているとも言われる。
どう立て直していくか─。これは経済の領域だけでなく、社会、教育、医療、介護全ての領域との関係の中で考えていくべきテーマ。あらゆる分野での再考が必要だ。
東京工業大学が東京医科歯科大学と統合するなど、教育界も再編の時を迎えている。なぜ今、統合なのか?
東京工業大学の益一哉・学長は次のように語る。
「産業界が『失われた30年』に陥ったのなら、その産業界に人材を送っている大学にも責任があると。その思いから、東京医科歯科大学さんとよく話し合って、統合を決意しました」
国、企業、個人の各領域でそれぞれ、国の制度設計、企業経営のあり方、そして個人の生き方の再考が進む。結局は『人』の可能性、潜在力をどう掘り起こしていくか。『人』を育てる教育界も根本からの見直しが進む。
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