住友不動産が住宅改修で環境貢献、住宅の「脱炭素」をいかに進めるか?
財界オンライン / 2023年8月1日 13時0分
事業開始から27年 16万棟の施工実績
「住宅の改修が大事なのは皆さんわかっているが、それを数字で示していかないといけない時代になっている」と話すのは、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の清家剛氏。
2050年の「カーボンニュートラル」に向けて、各産業が力を注ぐ中、家庭部門における脱炭素を実現するには、新築住宅とともに既存住宅の省エネをどう進めるかが重要な課題。
東京大学、武蔵野大学、住友不動産は脱炭素目標達成の一助となるべく、2021年12月から既存戸建住宅の改修における環境評価手法の確立に向けた共同研究を実施している。
住宅建築では建築時のCO2削減と、運用時の省エネが重要になるが、建築時の資材投入量を減らすには「既存建物の改修工事を進めること」(清家氏)が大事になる。ただ、同時に「改修の環境評価手法が確立されていない」(同)という問題意識があり、研究はそこに着目。
22年6月に「建て替え」と「改修」のCO2排出量を比較し、改修の排出量が建て替え比で47%削減されるとの研究結果を発表。
23年6月には改修の長寿命化効果、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス=エネルギー収支をゼロ以下にする家)化、ライフサイクル(原材料調達から、製造・使用・廃棄まで)脱炭素化の検証結果を公表した。
その内容は、省エネ性能を向上させる全面改修で、建て替え(約50年)よりも早い約35年でライフサイクル脱炭素の達成が可能だという結果となった。
住友不動産の住宅改修事業「新築そっくりさん」は1996年の事業開始から27年間で16万棟の施工実績がある。特に21年12月から提供を開始した高い省エネ性能を実現する「高断熱リフォーム」が好評で、大規模リフォームにおける受注率は「35から40%近くを占めるようになってきた」(住友不動産取締役・新築そっくりさん事業本部長の加藤宏史氏)
22年4月にリフォームとともに太陽光パネル・蓄電池を初期費用ゼロで導入可能な「すみふ×エネカリ」のサービスを開始。
これで住友不動産の住宅改修事業は「耐震性能」に加えて「断熱性能」「省エネ性能」「創エネ」という、脱炭素に向けた要素を高い次元で備えた事業となった。
研究に参加した武蔵野大学工学部サステナビリティ学科講師の磯部孝行氏は「使用期間が伸びるにつれ脱炭素に向かっていく。『使い続けられる改修』が重要な視点」と指摘する。
この研究は、新築に重きが置かれてきた国の住宅政策にも一石を投じるもの。これまで、既存住宅の改修の脱炭素への貢献度を定量化した研究事例が少なかったが、今回の研究が進むことで、評価の標準ができることが期待される。評価の枠組みができれば、補助金などによる政府、自治体の支援につながる可能性も出てくる。
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