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ウシオ電機社長・内藤宏治が語る「創業者・牛尾治朗さんの思い出」

財界オンライン / 2023年8月8日 18時0分

内藤宏治・ウシオ電機社長

一つひとつの製品づくりに心を込めて

 ─ 6月13日、ウシオ電機創業者の牛尾治朗さんが亡くなりました。現社長の内藤さんはどういう思いでいますか。

 内藤 わたしはどうしても会長と呼んでしまうのですが、会長は厳しさの中にも優しさのある方でした。

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 わたしが当社に入社したのが1986年で、当時すでに会長は執行の現場を離れておりましたので、若い頃はほとんどお話する機会もありませんでしたし、お見掛けすることもほとんどありませんでした。ただ、入社して7年目にわたしはオランダ駐在になりまして、一時帰国などで日本に帰ってくると、せっかく来たのだから顔を見せろよという感じで、いろいろとお話をさせていただきました。

 そこで覚えているのは、業績の話などはほとんど無く、現地での生活や家族のことで心配はないか? というようなことを聞かれました。ですから、その時は社員一人ひとりのことを大切に考えて下さる方だなと思ったことを覚えています。

 ─ そうした言葉を掛けられると嬉しいですね。

 内藤 ええ。その後、わたしは2014年から執行役員になるのですが、われわれ事業部長は3カ月に一度くらいの割合で会長に報告に行くんですね。そこでいろいろな報告をしていくわけですが、ある時、わたしの事業部で品質問題が発生したことがありました。

 すると、報告した瞬間に会長の表情が険しくなり、そんなトラブルがまだ起こっているのかと、猛烈な勢いで怒られたんです。問題が起こったのですから、われわれが怒られるのは当然なんですが、この時、会長は自分が現場に行くから、そこできちんと指導すると言いました。

 わたしの中では、そうは言っても、会長は財界活動などでお忙しいので、実際に現場に来ることはあるのだろうか? と半信半疑でいたら、本当に事業所に来られたので、われわれも驚いた記憶があります。



 ─ 牛尾さんは現場との対話を大事にしたんですね。

 内藤 そうなんです。そこで事業部長のわたしや当時の技術、品質保証の責任者などが集められて、わたしは会長に、いろいろなクレームに関する対策の報告をしました。

 われわれ現場レベルでは、品質問題と言っても発生率というか、何十本とある中で問題になったのはこれくらいですという言い方をしたんですが、会長のご指摘は非常に厳しいものがありました。

 そもそも一本も問題を起こさないようにするというのが基本なんですが、不具合が発生してしまうのは仕方がないと。しかし、発生率が低いから仕方ないと済ましていい話ではなく、お客様目線で考えたら、一つでも製品に不具合があればクレームになるわけです。だから、お客様にとっては一つひとつの製品が大事なんだということを言っていただきました。

 ─ 顧客視点で直せということですね。

 内藤 はい。発生率ではなく、むしろ件数で考えろということですね。

 もう一つは、お客様からクレームが来た時に、現場ではどうしてもクレームを抑えようとして対症療法になりがちです。しかし、対症療法ばかりではモグラ叩きと一緒ですから、会長は本質的な原因を追究しろということを言っておられました。

 一件、一件のお客様が大事だということと、対症療法ではなく、本質的な原因の追及が優先されるということの二つは、今でも忘れられない言葉です。

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