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元防衛大臣/拓殖大学元総長・森本敏「日本の再生は教育の再生から。真の問題解決能力を育むための教育が必要だ」

財界オンライン / 2023年8月4日 18時0分

森本敏・元防衛大臣/拓殖大学元総長

日本国内で貧富の差が激しくなってきた

 ─ 日本は国力が低下し、1人当たり国内総生産(GDP)は30位まで低下したわけですが、森本さんは日本の針路をどう考えていきますか。

 森本 株価は上がっているが、国民に豊かさの実感がない。円安でインバウンド(訪日観光客)が日本に大勢やってくるのは良いことだけれども、諸々の物価が上がって、経営者も苦しんでいるし、国民の所得が上がらないわけです。

「人材は資源ではなく資本」アクシスコンサルティング社長・山尾幸弘

 だから、外国からの訪問客は日本が安いと言って喜んでいるけど、日本人が海外に出ようとしなくなった。日本国内で貧富の差が激しくなってきたことも心配です。大学でも学費の滞納者が多くなっています。

 ─ これはどこから手を付けていけばいいですか。

 森本 やはり、日本の針路を考える時に、このままでいいのだろうかと疑問に思うのは教育ですね。

 大学内を見ていると、学生は自分と価値観の合う特定の友人としか付き合わず、あらゆる情報をインターネットで集め、どこかの大企業に就職することだけを念頭に日々を過ごしている。新卒で入った会社も3年ほどで3割以上が辞めるというので、すごい悪循環なんです。

 ということは、今の若い人たちにとって、これから自分がどうやって、社会の中で生きていくかということについて目標が弱いのだと思います。



 ─ 目標がないということですね。

 森本 目標がないのか、自分でどうやって生きていけばいいのか、分からない人がたくさんいると思うんです。

 日本では、米国のシリコンバレーのように若い時に苦しんでも、自分で起業して、絶対にビジネスを成功させていくんだ、という意欲や気概を持った人が少ないですね。そういう意欲が無いから、夕方になると友人と飲みに行って、恋人を探しつつ、若い時代の時間が終わってしまう。こういう人が社会の中に出てきても、社会はそういう人を必要としません。

 要するに、何か問題が起こった時に、ここで我慢して、自分も改善しようと考えたり、上司を相手に論争をして解決策を考えたりしない。問題が起こるのは他人のせいで、こいつは嫌な奴だなということで終わる。

 本来、若い人は自分で人生の目標をきちんと定め、必死になって目標に向かって努力するまで、飲んだり、遊んだりする時間はないはずだと思います。しかも、親は子供がどこか有名な会社に就職するとすごく安心してしまう。逆に、「自分で生きていきます」と言って起業する道を選ぼうとすると、ものすごく反対するわけです。

 それが親心なのか、将来がどうなるか分からないのに何をするのかと説教をする。しかし、わたしは人生を切り拓くのは、そういう人しかできないと思うんですね。

 ─ そういう状況下、日本の再生はどこから手を付けていけばいいのか。

 森本 やはり、わたしは学生の時に、本当にモノを考えるというか、モノを考えて生きていくというトレーニングをきちんとして、社会に出さないとダメだと思います。

 学校の授業でも宿題を出すとキーワードを使ってネットから探してきて、貼り付けるだけの文章が本当に多いです。これでは全然自分で考えていないし、考える力も身につかない。だから、問題解決能力も生まれてこないわけです。

 これから不確実な世の中になって来た時に必要なことは、真の問題解決能力です。わたしは日本の今後を考える上で、それを育むための教育が必要だと思います。

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