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JICのJSR買収に対し「市場が歪む」と懸念の声も

財界オンライン / 2023年8月9日 18時0分

JSR買収は日本の半導体産業の今後をどう変えるか?(写真はイメージ)

産業革新投資機構(JIC)による半導体素材大手・JSRの買収は、その後「国と企業の関係」という観点で、様々な議論を呼んでいる。

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 改めて今回の買収の意義を振り返ると、JSRは半導体製造に欠かせない「フォトレジスト」(感光剤)の世界シェアの約3割を握る企業。しかも日本勢5社で世界シェアの9割を握る状態でもある。この「グローバルニッチトップ」の企業を国として買収し、1社の規模が小さい日本の半導体・電子材料メーカーの業界再編を促していくシナリオ。

 だが、市場関係者の間からは「赤字でもなく業績を上げている企業を国が買収することで、同業他社との競争関係がおかしくなり、市場が歪むのではないか?」という懸念の声も出る。

 国としては、JICによる買収でJSRという再編の軸は手に入れたが、果たして日本の他社が「経済安全保障」や「日の丸半導体産業の強化」という大義名分だけで成長分野の事業を手放すかと言えば難しい。独占禁止法の問題をクリアできるかという課題もある。

 官から民へ─。約40年前の土光臨調による規制改革以来、国鉄をはじめとした各公社が民営化され、「民間活力」で日本の発展を目指すという流れが出てきた。しかしその後、半導体の凋落に象徴されるように、戦略物資で国際競争に負け、このままでは日本が没落しかねない状況に陥った。そんな中で官民連携の機運が台頭したことで、今回の政府機関によるJSR買収である。

 ただ、半導体を巡っては、TSMCの熊本工場への補助金やラピダスへの助成、そして今回のJSR買収と国としての資金投下が続くが、財政は無限ではない。その意味で「国民の税金を使う以上は、JSRもJICも、もっと国民に対して説明する必要がある」(ある市場関係者)という市場の声には耳を傾ける必要がありそうだ。

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