「設備投資100兆円と資金不足」ニッセイ基礎研究所・矢嶋康次氏の提言
財界オンライン / 2023年8月22日 11時30分
企業の設備投資が強い。当社予想ベースでは2023年度にはバブル期並みの100兆円に達する。コロナからの経済再開、人手不足やインフレ対応で、新商品開発が進んでいる。また不動産関連に強さがある。TSMCの熊本進出に代表されるように、経済安保で日本が見直されて、工場の建設が一気に増え始めたことも重なっている。
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消費者の値上げへの抵抗感は根強いものの、消費者の多くは労働者としての側面も持つ。これだけ原材料の価格が上がると、値上げない企業は持たないとの危機感も生まれてくる。
いま企業が行っていることは、これまでの安過ぎた製品・サービスの価格修正であり、その上に消費者が納得する付加価値の追加である。企業は付加価値の源泉が人にあるからこそ、賃上げに応じ、人的資本投資で質を高めることに、血道を上げている。設備投資は、実際に売上を生む手段として重要だ。コストカットを優先した考え方が付加価値創出に大きく転換してきているように感じる。
今のところ企業には潤沢な資金があるが、これだけ設備投資が出ると、マネーフローにも変化が出て来る可能性がある。
金融機関の貸出金の伸び率を見ると、コロナ危機やリーマン・ショックを除いて、現行統計で遡れる1992年以降で、過去最高の水準にある。ただ、中身をみると、半分近くは不動産業と個人向けで、ここに幅広い設備投資資金が加わり、さらに増えるか否かが注目される。
また、日銀が公表する資金循環統計(家計や法人、政府、海外など、経済主体別に記録された金融資産残高)にも、変化が出る可能性がある。
各経済主体の資産から負債を控除した差額は「資金過不足」と呼ばれるが、資金循環統計では各主体の資金過剰(貯蓄超過・投資不足)と、資金不足(投資超過・貯蓄不足)を知ることができる。日本では長らく、家計と企業が資金過剰で、政府と海外が資金不足という状態が続いてきたが、足元四半期ベースでは、企業の資金不足が出始めている。
詳細は不明だが、原燃料価格、人件費が高騰したことが影響した可能性はある。今後研究開発や人的投資で前向きな動きが広がれば、98年以来の大転換が起こる可能性もある。
いまから思い起こせば、企業部門が98年以降、資金余剰主体に転じたことで経済はおかしくなった。企業は資金を設備投資に回さなくなり、借金をどんどん返す経営を続け、経済不況に陥った。
マネーフローが変化することで、今まで良くなかった面が変わることもあるはずだ。企業が活性化することで、家計の所得が増加し、税収も増えて財政が改善する。そうした好循環を描くこともできるようになる。
ただ、企業が資金不足になれば、政府の財政赤字も許容されなくなる。国の財政問題に焦点が当たるということだ。
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