東京・虎ノ門店、人形町ファクトリーに続々客が並ぶ「グローバルでおにぎりのスタバを目指す」27歳若き社長・川原田美雪の挑戦!
財界オンライン / 2023年8月11日 15時0分
グローバルビジネスセンターとして開発が進む虎ノ門エリアで、女性客が並ぶおにぎりテイクアウト専門店〝TARO TOKYO ONIGIRI〟。店員はTシャツのユニフォームを着た20代前半~30代女性で店内はジャズが流れる。外資系企業を中心に周辺企業からのケータリング依頼も多く、日本でも外国人に日常食としておにぎりが受け入れ始めているという。「日常食であるからこそチャンスがある。日本のソウルフード〝おにぎり〟を突き詰めていく」とライスリパブリック社長・川原田美雪氏は意気込む。
海外店舗経営を前提にスタート
日本人が1年間に消費するお米の量は1962年の118.3キロをピークに減少傾向にあり、2022年は50.8キロとピークの時と比べると半分以下。日本人の米離れが進み、世界情勢による円安や原料高が続く中、十分な価格転嫁ができず農家の経営は苦しい。そんな中、可能性のある市場を海外に見出し、海外店舗経営を前提におにぎりテイクアウトの〝TARO〟が仕掛ける。日本でまずは試験運用し、来年以降は海外進出へと乗り出す予定。
出資は神明ホールディングス(以下、「神明HD」)とまん福ホールディングス(以下、「まん福HD」)の共同事業となる。神明HDは米穀卸売業等を行う創業120年以上の国内米卸の最大手。
一方、まん福HDは事業の後継者不足問題を解決する食に特化した事業継承プラットフォームを運営している。
米の消費量拡大を進める神明HDと、和食の文化継承をしていきたいまん福HDのコラボレーション事業で、新たに世界で戦える日本食ブランドとなるか─。
なぜ〝おにぎり〟なのか?
川原田氏は次のように意気込む。「日本が世界のビジネスで勝負できる部分は『食』である。特に、アジア圏などの米食がある地域では、世界で日本がトップを取れるポテンシャルがまだある」
2022年、世界の飲食店を評価する格付け機関「ミシュラン」星数の都市別ランキングによると、1位東京、2位パリ、3位京都、4位大阪、5位ニューヨーク。この通り、日本が上位を独占しており、日本の食文化は世界最高水準ともいえる。
しかし、マクドナルドやスターバックスにあたる日本発のグローバルファストフードチェーン店はまだ出てきていない。健康志向が高まる中、相対的にローカロリーの日本食が世界的ブーム。そこで「世界のヘルシーファストフードの地位を取っていきたい。目指すはおにぎりのスターバックス。おにぎりが人々のライフスタイルの一部になるような存在になりたい」と川原田氏は語る。
有名シェフとコラボし商品開発
同店のおにぎりの特徴は、コンビニなどで売られているおにぎりの5倍の具材が、おにぎりの中ではなく上に乗っていることだ。海外の人が従来のおにぎりを初めて食べたときの感想は、「具の量が少なすぎて驚く。中が見えないから選ばない」だそうである。そういった率直な声を反映した。
具材は、ミシュラン3つ星「祇園 さゝ木」の佐々木浩シェフからアドバイスをもらい、約50種類のメニューが誕生。
一般社団法人全日本・食学会が主催のイベントである「全日本・食サミット」では、銀座「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務シェフ、赤坂「トゥーランドット 臥龍居」の脇屋友詞シェフとコラボし新商品を開発。具は和風だけでなく、様々なジャンルで多様性に富む。おにぎりを広く世界に浸透させていくには、日本のスタイルを押し付けるのではなく、より現地に馴染むよう、具材は海外のカルチャーに合わせていきたいと考えているという。
意外なところに人手不足問題解決の鍵
川原田氏は新卒で入社したLINEで広告営業からマーケティングの責任者までを担当。営業、チームマネジメントのためのマニュアル作りから研修までを経験した。
しかし、最初は営業成績最下位。川原田氏は、自身に全く合っていない営業方法を正しいと思い込み実行していたと原因分析。そこから、顧客一人一人に丁寧に向き合い、確実に掴んでいく自分に合った営業スタイルに変えてからは一気に結果がでるようになったという。
その経験から、1つの汎用的なマニュアルではなく、得意なやり方で成果を上げられるマニュアルパターンを複数用意し、適性をみて選定までを行った。「20人全員が営業のスターでなくても、全員が当たり前に売れる仕組みをつくった。得意、不得意、やりたいこと、やりたくないことは人それぞれ違う。人材が採用できなくとも、個人が能力を最大限発揮できるように、(会社側が)合わせていけばいい」という考え。
これは人手不足の中、採用に依存せず限られた人材の中で業績を上げる方法として、一つの知恵である。
マネジメント哲学
川原田氏は共働きで多忙な両親のもと、1歳になる前から保育園以外にも近所の人、複数の親戚、習い事の場など、たくさんの場所に預けられていた。幼少期から様々な年代の人と話してきたことが、「何事にも怖気ずに、世界にもチャレンジするたくましさを形成していったと思う」と振り返る。
大学時代は、アメフト部のマネージャー代表として、選手100人とスタッフ50人をマネジメントしていた。全員と対話を繰り返し個性を認めつつも、自己実現とチームビジョンの擦り合わせを逐一行うことを何よりも大切にしていた。この時の経験が、LINE時代のチームマネジメントと、今の会社経営の根本概念になっているとのこと。
世界を舞台に、多様性を認め日本文化と融合した商品で新たな価値を創出する川原田氏の挑戦は始まったばかりである。
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