【農林水産省】日本産食品の輸入規制 EU撤廃も予断許さず
財界オンライン / 2023年8月7日 11時30分
欧州連合(EU)が、東京電力福島第1原発事故後に導入した日本産食品の輸入規制を8月3日に撤廃する。原発事故後の風評被害に苦しんできた被災地には朗報だ。
しかし、日本政府が今夏に計画する原発処理水の海洋放出が実施された場合、香港が水産物禁輸で対抗する構えを見せており、先行きは予断を許さない。
「被災地の復興を後押しするものだ。大変歓迎したい」
野村哲郎農林水産相は、閣議後記者会見で安堵の表情を見せた。4月に宮崎市で開かれた先進7カ国(G7)農相会合、6月にインドで開かれた20カ国・地域(G20)農相会合など、機会を捉えては、EU幹部との面会し、規制撤廃を働き掛けてきた努力が実った形だ。
EUは、福島県産の一部の水産物やきのこ類など10県の食品に放射性物質の検査証明書を提出するよう求めていたが、これが不要になる。EUに準じて規制を導入しているスイスやノルウェーなども追随すると見込まれるため、当初55カ国・地域で導入された輸入規制措置は、中国や韓国、香港、台湾、ロシアなどを残すのみとなり、全面撤廃に向けた追い風となる。
だが、そこに処理水問題が影を落とす。香港政府は、日本が処理水の海洋放出を実施した場合、10都県の水産物を輸入禁止にすると発表した。中国も輸入規制を強化する対抗措置をちらつかせており、規制撤廃の流れが逆戻りする恐れがある。22年の香港への農林水産物・食品の輸出額は2086億円。中国(2783億円)に次ぐ2位となっており、農林水産物の輸出拡大を目指す日本にとって看過できない。
野村農水相は「引き続き香港政府に対して必要な情報提供を行うとともに、科学的根拠に基づき、規制の早期撤廃、さらなる規制強化が行われないことを強く求める」と強調。あらゆるルートを使って働き掛けていく考えを示した。
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