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【著者に聞く】『インフレ課税と闘う!』第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生

財界オンライン / 2023年8月11日 11時30分

『インフレ課税と闘う!』熊野 英生 著 集英社 定価1980円(税込)

稼ぐ力の向上は、老後の安心や経済的自立にもつながる


 知らないうちに財産が抜き盗られているとすれば、それは犯罪的行為だ。それに気付けば誰でも怒るはずだ。驚くべきことに、すでに現代日本では同様のことが公然と行われている。インフレ課税だ。私たちは物価高=インフレに悩まされている。

 経済学の泰斗J・M・ケインズは、それをInflation Taxと呼んだ。ケインズは、「国民から知らない間に財産を没収する方法」がインフレなのだと喝破した。2022年度の消費者物価上昇率は3.2%。年収500万円であれば、実質年収は▲16万円(=500万円×3.2%)も目減りする。

 23年度も2.5%前後のインフレになりそうだから、追加損失は▲12.5万円前後も膨らむ。今年は何とか30年ぶりの賃上げが実現しそうだが、それでも賃上げ率は物価上昇率に割負けるだろう。実質賃金のマイナスとは、姿を変えたインフレ課税なのである。ケインズは、国民が為すすべもなく、インフレ課税にやられる姿を皮肉をたっぷりに「知らない間に財産が没収される」と表現した。

 では、どうすればインフレ課税に対抗できるのか。

 答えは、外貨運用と副業だ。稼ぐ力を高めることだ。円安で輸入インフレに拍車がかかったときは、ドル運用益で生活コスト増を取り返せる。副業は、自分が会社から適正な労働分配を受けていないと不満を持ったとき、自分の手で稼ぎを増やす方法になる。能力を磨き、自分で稼ぐ力を高めれば、その満足感は大きい。

 副業と言っても、アルバイトより、むしろ起業だ。長い職業経験で得られたスキルで自身の事業を始めることを薦めたい。他人の会社で働くと、どうしても割が悪くなる。

 外貨運用や副業といった対処法は、「飲めば効くようなワクチン」ではない。むしろ、免疫力をつけることに近い。稼ぐ力の向上は、老後の安心や経済的自立にもつながる。経済的健康は、誰かに依存するのではなく、自分で免疫療法で高めるのだ。

JSR買収の狙いは何ですか? 答える人 JICキャピタル社長CEO・池内省五

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