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【倉本 聰:富良野風話】海洋汚染

財界オンライン / 2023年8月26日 18時0分

フクシマ原発のタンクにたまった汚染水の海洋投棄に関して中国がイチャモンをつけて来ている。

【倉本 聰:富良野風話】一枚の葉

 政府はどうやらこの一件について、無視する態度に肚をくくったらしいが、至極当然だと僕も思う。汚染水に含まれるトリチウムの量が人体に害を及ぼすかどうかについて、IAEAが大丈夫というお墨つきをくれているのだし、中国自身の原発から海洋投棄されている汚染水の量も半端でないという報道に接すると、わが国の海産物への不買を唱える中国の態度はどう考えても理屈に合わない。大体、日本列島の東側に棄てられたトリチウムが、どうして西側の東シナ海を汚染するのか、そのところの因果関係が僕には何とも理解できない。

 もう10年ほど前になろうか。

 西表島のマングローブの再生のために、その海岸線を歩いたことがある。その時、僕らが一驚したのは、西表の海岸線に漂着する海洋廃棄物の余りの量の多さについてである。それを集めて山にしたら、忽ち3つの巨大な山になった。そのゴミの内訳は、漁具をはじめとして電気冷蔵庫まで。いずれのゴミにもハングルと中国語が書かれていた。その時抱いた感想は、地球の海洋の海流は西から東へ流れているのだなァというものであり、更に後年、カナダ西海岸の島々を巡ったとき、その島々に漂着する海洋廃棄物は、黒潮に乗って漂着した日本の廃棄物が余りにも多く、それらを集めた島の住民が日本の海洋投棄物だけを集めて、遠くからもよく見える巨大なゴジラのオブジェを作っているのを見せられて赤面したという記憶がある。

 世界の海は一つの水の流れであり、主たる流れは西から東へと動いている。

 今もし中国がフクシマの汚染水の問題を取り上げるなら中国自身の複数の原発が海洋放出している処理水の問題をどう説明するのか。中国遼寧省・紅沿河原発、約90兆ベクレル。浙江省・秦山第三原発、約143兆ベクレル。遼寧省・福建省・寧徳原発、約102兆ベクレル。広東省・陽江原発、約112兆ベクレル。合計447兆ベクレル。これに対してフクシマ第一原発の放出量22兆ベクレル。それとこれとを比較してみると良い。

 とはいえ、それだけのトリチウムが海岸放棄されているということは、その海から数多の海産物を摂取している我々近隣の住民にとっては決して気持ちの良いことではない。風評被害が出るのは当然である。

 かくなる上は中国と日本、目鯨たててケンカばかりしてないで、その海から獲れた海産物を素材に、中国料理・日本料理、それぞれの得意の技を駆使して、習近平さん、岸田文雄総理合同の一大晩餐会を開き、風評を吹っとばすべく福島沖でいま獲れたばかりの海の幸をむしゃむしゃ旨そうに喰べてみて欲しい。そうすれば風評なんて一挙に吹っとぶ。勘定はジャンケンで負けた方が払って。

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