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ソフトバンクGが〝虎の子〟アームを9月にも新規上場

財界オンライン / 2023年8月23日 18時0分

孫 正義氏

ソフトバンクグループ(SBG)は9月にも、傘下の英半導体設計大手アームを米ナスダック市場にIPO(新規株式公開)させる方針だ。同時期にアップルやエヌビディアといった米IT大手がアームに出資するとも取り沙汰されている。

 アームは電力効率の良い半導体の設計に強みを持ち、スマートフォン向けで高いシェアを誇る。今年最大規模のIPOとなる可能性もあり、米IT大手はアームへの出資で同社との関係を強化したい思惑がある。SBGにとっては、上場後の株価を安定させる効果が期待できる他、IPOによって得られる資金で財務基盤を強化できる利点は大きい。

 SBGの23年4―6月期連結決算(国際会計基準)は、当期損益が4776億円の赤字だった。赤字幅が3兆円超だった前年同期からは改善したが、最終赤字は3四半期連続。孫正義会長兼社長は23年6月の株主総会で「いよいよ反転攻勢の時期が近づいている」と宣言したものの、業績は楽観できる状況にはない。

 実際、番頭役で専務の後藤芳光氏は8月の決算会見で「反転攻勢はするが、慎重に投資を行っていく」と孫氏を諫めるかのような発言。23年4―6月期は新興企業に投資する「ビジョン・ファンド(SVF)」事業の税引き前利益が610億円となったものの、「恐る恐る(投資を)再開した」(後藤氏)にすぎない。世界的なインフレや金利上昇の影響などで新興企業関連の投資環境は厳しく、SVF事業のV字回復までは期待しにくい。

 円安や半導体市況も逆風だ。23年4―6月期にSBGは円安でドル建ての負債が重荷になり、4646億円の為替差損を計上した。またアーム事業の米ドルベースの売上高は、在庫調整や消費者需要の減速により半導体市場全体が弱含んだことから、前年同期比10.8%減に終わった。

 アームの上場を起死回生につなげられるのか、それとも一連のリスクに対処できずに低空飛行を余儀なくされるのか。孫氏の手腕が改めて問われている。

【著者に聞く】『インフレ課税と闘う!』第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生

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