【国土交通省】大阪万博、準備遅れ深刻化 建設業界に警戒感
財界オンライン / 2023年8月28日 15時0分
2025年4月に開幕する大阪・関西万博で、海外の国・地域が出展するパビリオン建設工事の契約が進まず、予定通りの開催が危ぶまれる事態となっている。焦る国や日本国際博覧会協会(万博協会)は建設業界に協力を求めるが、資材価格高騰や人手不足といった課題を抱える業界側は無理な施工を強いられかねないと警戒感を募らせている。
「工事を請け負うには、きちんとした設計と、適正な金額や工期が用意されることが前提として必要だ」
日本建設業連合会の宮本洋一会長(清水建設会長)は7月21日の記者会見で強調。参加国側の準備や詳細設計の遅れが工事受注が進まない要因だと指摘し、建設業界が万博に消極的との見方をけん制した。
約50の国・地域が自前で建設するタイプのパビリオンを巡っては、参加国と建設業者の契約が難航。ほとんどで着工のめどが立っていない。
万博協会の石毛博行事務総長は「年末までに着工すれば間に合う」とするが、宮本氏は「何が根拠なのか分からない。相談を受けて『間に合いますよ』と言った覚えはない」と釘を刺した。
また、関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)は7月18日の定例会見で、個人的な意見として、建設遅れによって撤退する国があっても仕方ないとの考えを示している。
国や万博協会は、このままでは「万博として成立しなくなる」(経済産業省)と危惧。参加国に予算増加やデザイン簡素化を求める一方、建設業界に積極的な協力を要請している。国の威信をかけた大イベントだけに、業界側も「最終的には無理をしてでも間に合わせる」(大手ゼネコン幹部)と覚悟するが、過度なしわ寄せはなるべく避けたいというのが本音だ。
特に懸念されているのが、24年4月に建設業界に導入される時間外労働の上限規制だ。建設作業員の不足に拍車がかかり、万博に十分な人員を割くのが困難となるのは避けられない。建設業界や万博協会内では、この上限規制適用を万博には例外扱いとする案も浮上している。ただ、制度を所管する加藤勝信厚生労働相は慎重姿勢で、ハードルは低くない。
資材高騰などコスト増による採算悪化への不安も根強い。経済産業省は8月2日、受注建設業者を対象とした貿易保険の創設を発表。加入すれば、参加国から代金が支払われない場合に代金の9割以上が補償される仕組みだが、どこまで建設業者に受注を促せるかは未知数だ。
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