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マネックスグループ社長・清明祐子の「アセマネ」戦略「顧客の資産を増やすためのサービスで差別化」

財界オンライン / 2023年9月14日 18時0分

清明祐子・マネックスグループ社長CEO

敷居が低く、口座数の多さで存在感を高めてきたネット証券。今や総合証券会社とも競う状況だが、同じネット証券との競争も激しい。その一角、マネックスグループでは創業から初めて、CEOが交代。創業者の松本大氏は会長に、社長には清明祐子氏が就いた。「当社にとっては大きな一歩」と気を引き締める。ネット証券で三番手だが、他社と差別化するために、どんな手を打つか。

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投資への関心強まる中 ネット証券の次の展開は

「日本はこれからではないかと思うし、今後を楽しみにしている」と話すのはマネックスグループ社長CEO(最高経営責任者)の清明祐子氏。

 日本は長きにわたるデフレなど低成長が続き、「失われた30年」などと言われてきた。清明氏は「私は2001年に社会人になったので、以降ずっとデフレ。デフレは現金を持てば挑戦をしなくてもいい環境で、成長を諦めたような状況。しかしようやく日本も物価、金利が上がる環境になりつつある」と話す。

 インフレでは「今」、手を打たなければ、企業価値を上げていけないため「モメンタム(方向性、勢い)が全く違う」(清明氏)。企業が成長を志向し、業績が上がれば、個人の所得も上がるという循環になる。

「これからの30年、我々の世代、若い世代で日本を前向きに変えていくことができる、いいチャンスではないか」と清明氏。

 こうした環境下、清明氏は23年6月にマネックスグループの社長CEOに就任した。三和銀行(現三菱UFJ銀行)、PEファンドを経て、09年にマネックスグループの投資銀行に入社してグループ入り。19年にマネックス証券社長、22年には創業者で現会長の松本大氏とともに共同CEOに就いており、満を持しての登板と言える。

 1999年の創業以降初めてのCEO交代。清明氏は「当社にとって大きな一歩。共同CEO、証券社長も務めてきたが、単独でCEOとなると覚悟、日々の仕事への向き合い方が変わったと感じる。私がやるべきことは自分の意思で、この会社にとっていいと思うことを決め、すぐに動くこと」と抱負を語る。

 折しも、24年からは「新NISA」が始まる。そして日本がインフレ的流れになっていくのであれば、現金よりも投資に振り向けた方がいいということになる。その意味で、ここでどんな手を打つかで、先々の成否が分かれる重要局面。

 新NISAには、長期の資産形成に向けた「つみたて投資枠」と、個別株にも投資でき、自由度が高い「成長投資枠」があるが、この「成長投資枠」で投資できる投資信託だけでも現時点で1491本ある。投資初心者が、どれに投資すればいいのかを選ぶのは難易度が高い。

 ネット証券は基本的に投資ができる場所を提供することに特化して、総合証券会社のように担当者によるアドバイスがない代わりに、投資コストが安いという特徴で事業展開してきた。

 今は各社、それぞれに違う戦略を打ち出しているが、マネックス証券では、投資分析ツールや自身の投資のクセや成績を客観的に振り返ることができるツールを開発し提供してきた。「お客様が資産を増やしていくことができる〝武器〟を提供してきたが、これが今、花開きつつある」。17年に基幹システムを内製化したが、それもサービス向上のため。

 これまでのマネックス証券への評価は「ツールはいいけど手数料が高い」というもので、取引するならば他のネット証券という人も多かったのが現実。だが、マネックス証券も手数料引き下げを進めた結果、他社とコストに余り差がなくなった。

 また、3年前から、取引を通じて手数料を得る「ブローカーモデル」から、顧客の資産が増えるためのサービスを提供し、その中から対価を得る「アセマネモデル」への転換を進めてきた。投資一任型ラップサービスも手掛けているが運用力や提案力の向上が今後さらに必要。

「金融商品は、どこで買っても同じ値段だが、最終的には提供している企業の中で働いている人の〝思い〟の違いが表れてくると信じている。これは我々の強みだと思っている」

 規模も課題だ。SBI証券が約1000万口座、楽天証券が約900万口座に対し、マネックス証券は約220万口座という形でネット証券3位だが、上位2社とは差がある。「いいツールやサービスがあっても届けていけないという認知度の問題があった」と清明氏。

 ここを埋めるべく進めているのが銀行との提携。22年末にはイオン銀行と提携、24年1月から商品の提供や、システム管理、バックオフィス業務をマネックス証券が手掛ける形になる。マネックス証券が「裏方」となって、その商品、サービスをイオン銀行の利用者に届けていく。

 かつてはネット証券というだけで新しく、総合証券からの乗り換えもあったが、今は一つの産業として成熟化。手数料の安さで競った時期もあったが、それも限界に達した。これからは、前述のようなサービスでいかに差別化していくかが勝負。

「他のネット証券と比較されることが多いが、日本にはまだ資産運用をしていない人は山程おられる。その世界に目を向ける必要がある。そうした方々に気軽にちょっと触れてもらえるサービスを提供し、成功体験を積んでいただくことが大事」

 一方で、22年に富裕層向けに対面でプライベートバンキングサービスを提供する「マネックスPB」を設立するなど、ネット上だけでないリアルの接点も増やしてきている。

 社内に対しては「みんなでつくっていこう」と訴えている。「もちろん私が責任を持ってやるが、創業者からの移行期の中で社員1人ひとりが会社を変え、未来をつくるチャンスがある。飛躍に向けたいいタイミング」

 創業者の松本氏が築いた世界観とは一味違う、新たな「色」を出すことができるかが問われている。

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