「ジャクソンホール」後、厳しさ増す日銀の金融政策運営
財界オンライン / 2023年9月11日 19時0分
主要な中央銀行トップや有力経済学者が年1回集まり議論する「ジャクソンホール会議」。今年は8月24―26日に開かれたが、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の講演は追加利上げが必要になる可能性に言及しながらも、米国や国際金融市場を動揺させなかった。
ただし、日米金利差拡大への思惑から円安・ドル高が進行、一時、1ドル=146円台後半まで円が売られ、今年の最安値を更新。円安圧力の高まりは輸入物価高を助長し、日銀の金融政策運営を一段と困難にさせる可能性がある。
日銀にとってはFRBの利上げの打ち止めが未だに見通せないことは悩ましい事態。米利上げの可能性が残る限り、円安・ドル高圧力は収まらないからだ。
日銀は7月28日の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の運用の柔軟化を決めた。植田氏は「為替をターゲットにしないということに変わりはない」としつつも、「金融市場のボラティリティ(変動)をなるべく抑えるという中には、為替のボラティリティも含めて考えている」と微妙な言い回しながら、為替相場も意識した政策修正だったことを仄めかした。
政治の要請もあった。春闘では企業の協力の下、大幅賃上げを実現したが、食料品やエネルギー価格の上昇に追いつかず、家計を圧迫し続けている。ある日銀幹部は「政府が今、最も気にしているのは株価ではなく、為替の方だ」と解説。
日銀はマイナス金利解除について「来年の春闘で賃金の持続的な上昇が確認されてから」と慎重な構えを示してきたが、「為替市場はおとなしく待ってくれそうにはなく、円売りで挑発して更なる政策修正を催促している」(大手行ディーラー)。
とは言え、為替だけに目を奪われて、性急にYCCの撤廃や短期金利の利上げに走れば、せっかく上向いてきた景気や物価を失速させるリスクが大きい。
FRBの利上げ打ち止めも見えない中、日銀の金融政策運営は一層厳しさを増している。
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