【エーザイ】認知症薬が日本でも承認 薬価で医療財政との兼ね合いが課題
財界オンライン / 2023年9月11日 15時0分
100万円単位になる可能性も
認知症治療の「転換点」を迎えた。厚生労働省の専門部会がエーザイと米バイオジェンが共同開発した認知症治療薬「レカネマブ」の国内での製造販売について承認することを決めた。
エーザイCEO・内藤晴夫のエンパシー経営論「患者さんとの共感関係ができてこそ」
今後の焦点は価格設定だ。レカネマブは日本でも高額になると見込まれており、公的保険の適用で普及すれば財政負担が膨らむ懸念があるからだ。既に承認を得ている米国での卸売価格は患者1人当たり年2万6500ドル(約388万円)程度に設定。日本ではこれよりも低くなるものの、「100万円単位の高額医薬品になる可能性が高い」と専門家も指摘する。
仮に薬価が年300万円程度になった場合、医療費の窓口負担は年90万円(3割負担の場合)。医療保険には一定額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」があるため、70歳以上の年収約370万円以下の一般所得層の外来負担は年間で14万4000円が上限となる。
個人負担は抑えることができる一方で、残りは医療保険の運営主体(保険者)が負担することになる。財源は加入者が払う保険料と公費だ。薬の価格が高価であれば公的保険なしで誰もが容易に手にすることができなくなる。そうすると、財政負担の増加につながる。薬の価格を決める中央社会保険医療協議会(中医協)がどう判断するかだ。
一方のエーザイは薬価の抑制について警戒。CEOの内藤晴夫氏は「この薬剤は当事者の病気が良くなるという医療効果に加えて、家族や医療従事者のケアに対するインパクトが大きい」と強調する。レカネマブの投与で症状の進行を2~3年遅らせると推定されているからだ。
同社は日本におけるレカネマブの患者1人当たり年間の価値は社会的価値も含めて最大468万円とする独自の推計結果も公表。「決して国の健康保険財政を圧迫するような規模にはならない」(同)との見方を示す。
介護保険制度で2021年度にかかった介護費用(介護給付費と自己負担)の総額は11兆円超となり、過去最多を更新。新薬開発は日本の製薬産業の育成にもつながるだけに、医療財政との兼ね合いの難しさが浮き彫りになっている。
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