不動産バブル崩壊の中国経済 世界経済への影響も必至
財界オンライン / 2023年9月18日 7時0分
不動産最大手の救済説も
中国経済は厳しい状況が続く。米国で破産法の適用を申請した不動産大手・中国恒大集団は、8月28日に香港市場で株式の取引が再開されたが、当日は8割近く急落する事態に。IMF(国際通貨基金)は、2023年の成長率が5.3%に対し、24年は4.5%に低下するという見通しを出したが、さらなる下振れも懸念されている。
統計局が発表していた16―24歳の若年層失業率は6月、21.3%と過去最高だったが、卒業後半年以内に出身地に帰った学生は22年に約47%というデータもあり、実質的に若年層の半分が失業中だと見られる。
「今の中国経済は、過去の日本に例えると1993年頃と言えるのではないか」と指摘するのは、ニッセイ基礎研究所上席研究員の三尾幸吉郎氏。日本は89年に株価がピークアウトし、国が90年に建設・不動産に対する「総量規制」を導入、企業の不良債権が積み上がり、90年代末の金融危機に向かった。
中国では不動産投機に走った富裕層が多く、「共同富裕」を掲げた習近平政権は16年から「住宅は住むためのもので投機の対象ではない」として規制を強化、これが不動産バブル崩壊につながったという見方は強い。
不動産バブル崩壊は、シャドーバンキング(ノンバンク)の問題に波及する恐れが指摘される他、地方政府傘下の投資会社が抱える「隠れ債務」が金融システム不安を招く恐れも懸念されている。不動産・建設危機から金融危機に向かった日本を後追いしかねない状況。
国内問題が起きた時に外に目を向けさせるのは中国の常套手段だが、「今回は奏功するとは思えない」と三尾氏。例えば、福島第1原子力発電所の処理水を巡る中国の反発は、逆に共産党への批判に向かう恐れもある。いずれにせよ、中国経済の不況局面は台湾問題などに影響を及ぼす恐れもある。
7月開催の中国共産党の中央政治局会議の場で習近平氏は前述の「住宅は住むためのもので……」というフレーズを言わなかったようだ。不動産危機への対策が議論された可能性がある。
中国の不動産最大手・碧桂園も経営危機に陥っているが、この企業を政府が救うかどうかが、今後の分水嶺になるかもしれない。
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