東電が原発処理水を海洋放出 問われるリーダーの対応
財界オンライン / 2023年9月14日 7時0分
東京電力は8月24日、東電福島第1原発の敷地内に溜まった放射性物質「トリチウム」を含む処理水の海洋放出を始めた。処理水の保管タンクを減らして廃炉作業を加速させるためで、放出完了までは今後30年程度続く。一方、漁業者は風評被害への懸念から反対の立場を崩していない。
政府は国際原子力機関(IAEA)が7月、処理水の海洋放出を「国際的な安全基準に合致している」とする包括報告書を公表したことや、地元漁業者らとの意見交換を重ねる中で、「一定の理解を得た」と判断した。
放出開始後、東京電力ホールディングス社長の小早川智明氏は、「廃炉が終わるまで風評を生じさせないという決意と覚悟の下、対応に当たる」と強調。岸田文雄首相も、「全責任を持って取り組んでいく」と表明した。
一方、放出を受け、中国は日本の水産物輸入の全面停止に乗り出した。東電福島第1原発事故をきっかけに、東京都や福島県など10都県の輸入を停止しており、これを全国に拡大させた形で漁業者らへの影響は避けられない見通し。
政府と東電は2015年、福島県漁業協同組合連合会に「関係者の理解無しにはいかなる処分も行わない」と約束した。ただ、福島県漁連の野崎哲会長は、放出決定後も「われわれは反対であるという形で今後とも臨みたい」と語った。
小早川氏は、「ご理解を得る活動は一過性ではなく、廃炉が終わる時まで続き、終わった時に初めて結論を得る」と語る。
今は一国の動きが世界とつながる時代。中国など海外からの反発だけでなく、国民や地元漁業者からも厳しい視線はこれからも注がれ続ける。日本としては毅然とした態度で臨むしかないが、同時に反対派の理解をどう得ていくのか。政府や東電など、リーダーの対応が今後も問われそうだ。
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