危機感の共有から統合へ 東京医科歯科大学が東京工業大学との統合を決めた理由
財界オンライン / 2023年9月15日 18時0分
「新しい大学ではスタートアップ支援も考えているし、ベンチャーキャピタルと組んで企業とも提携していきたい。大学の強みは教育と研究。企業と連携していけば知的財産や人事交流でもシナジーが生み出される。一緒に明日の医療を展開していきたい」─。このように強調するのは東京工業大学との統合を決めた東京医科歯科大学学長の田中雄二郎氏だ。
【東工大との統合】東京医科歯科大学・田中雄二郎学長が語る「教育と研究にもっと力を入れて、人々の生活を豊かにする大学を」
医療系で国内トップレベルの研究力を持つ東京医科歯科大学。しかし、田中氏はコロナ禍を経て「今日の医療を支えることはできるが、将来の医療を支えることができるのか」という危機感を抱いていた。その突破口となるのが〝医工連携〟。診療報酬に規定される今の医療から脱却した事業体を構築し、「異分野融合の科学」(同)を見据えた。
そのときの統合相手として田中氏が声を掛けたのが東工大学長の益一哉氏。益氏もまた「1881年の設立時から『人を作って新しい産業を興す』と謳っていたのに、何も新しい産業を興していない」という危機感を抱いていた。そんな両大学の本気度は統合形態に表れている。
大学業界では名古屋大学と岐阜大学が運営法人を統合。奈良教育大学と奈良女子大学も1つの法人に統合して2つの大学を運営することを決めた。一方の東京医科歯科大と東工大は「1法人1大学」だ。東京科学大学(仮称)として2024年度に誕生する予定。そして、認知症やがんなどに有効な次世代薬の開発を目指す共同研究組織の設立にも動く。
少子高齢化で22年の出生数も80万人を割り込んだ一方で、大学全入時代を迎えたとはいえ、大学数は800校程度まで増え、私立大学の3割以上は定員割れ。大学として生き残れるかどうかは大きな経営課題となっている。
これまで東京医科歯科大はNECや三菱地所など民間企業と連携して新たな技術や産学連携の場をつくってきた。田中氏は今後の日本の医療を支えるためにも、企業との連携の必要性を強調する。新大学の使命と役割とは何か。
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