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中部電力が米スタートアップ ・次世代原子炉開発企業へ出資

財界オンライン / 2023年9月20日 18時0分

林 欣吾・中部電力社長

国民の原発に対する不信感は根強いままで…

「原子力は脱炭素社会を実現するには必要なピースの一つと考えており、次世代型原子炉に着目した。原子力事業の持続性を追求していく中で、将来的に経営の選択肢を広げていくことは大変有意義なことだと考えている」――。

 こう語るのは、中部電力専務執行役員グローバル事業本部長の佐藤裕紀氏。

 中部電力(林欣吾社長)が米国の小型モジュール炉(SMR=Small Modular Reactor)開発企業ニュースケール・パワーへ出資する。中電は国際協力銀行(JBIC)が保有する株式の一部を取得。取得額は非公表だが、JBICの出資額は1億1千万ドル(現在のレートで約160億円)であることから、数十億円規模となりそうだ。

 SMRは原子炉1基ごとの出力を小さくすることで、原子炉の冷却を容易にし、安全性を高めた原子炉。次世代原子炉と呼ばれ、工期短縮や建設コストの低減などが期待されている。

 中電が出資するのは、米ニュースケール・パワー。2007年設立のスタートアップ企業で、同社が開発中のSMRはすでに米国原子力規制委員会(NRC)の設計認証を得ており、2029年の初号機稼働を目指している。現在は世界10カ国以上で導入が検討されていて、開発の行方に注目が集まっている。

 佐藤氏は「他社に先んじて、技術情報を含めて、次世代型原子炉にアクセスする立場になるので、将来的に日本で展開されていくということについても大変期待している」と語る。

 昨年、岸田文雄政権は、電力の安定供給確保や温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の達成に向けた脱炭素化を理由に、原発回帰の方針を打ち出した。

 ただ、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、脱炭素の観点から原子力が世界的に見直されているのは事実だが、国民の原発に対する不信感は根強い。また、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルは事実上、暗礁に乗り上げ、〝核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)〟の最終処分地も定まらない。

 多くの課題を棚上げしたままのエネルギー政策には危うさが付きまとうのも事実である。

【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅

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