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【ずいひつ】デザインスタジオYZDA・吉田恵美代表 「『とことん聞く』。それが富裕層ビジネスの肝」

財界オンライン / 2023年9月30日 11時30分

コロナ禍を経てライフスタイルが変化し、「住まい」の在り方が大きく変わりつつあります。自宅にいる時間が増えたことで、日本だけでなく世界でも住環境への意識は高まっています。しかし一方で、コロナを経ても変わらない価値観があります。「自分のための空間」の価値です。

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 日本では「失われた30年」という言葉に象徴されるように、デフレが続き、モノやサービスを高く売ることを苦手としてきました。ですから、日本の住宅も画一的なものが増えていきました。オンリーワンという価値観が希薄になっていたのです。

 ところが、私が主に活動の拠点とする米国では、いかに高価でも、自分のこだわりが詰まり、人生を豊かにしてくれるものは受け入れてもらえます。特に私がメインとする富裕層は、こだわりを人一倍強く持っています。そして、美意識をおしまず磨くことに時間をかけます。

 私の職業は「インテリアデザイナー」です。カーテンや家具、照明など部屋に合う既存の製品を選び、空間を演出するのはもちろんのこと、私は内装の全てを一から設計デザインするインテリア・アーキテクトです。

 この仕事の肝は「聞く」を「伝える」こと。どういうことかと言いますと、クライアントが潜在的に心に秘めている願いや欲求、自分らしさの表現を目に見える形にするためには、とにかくクライアントの話にとことん耳を傾けるということです。

 クライアントは家族で住んでいるケースがほとんどですが、家族といっても1人ひとり、好みも違えば希望も違います。それらを事細かに把握するためには、誰がどのようにして使いたいのかといった生活シーンが想像できなければなりません。

「普段は何をしていますか?」。生活シーンの要素である趣味や休日の過ごし方等は自分らしさの最たるもの。私は普段からメモをとらずに対話に集中し、クライアントの暮らし方の全体像を掴むようにしています。

 住まいをデザインする上で、私はアートとサイエンス、コミュニケーション、そしてマインドの全てを大事にしています。どれが欠けてもクライアントを納得させられるデザインを導くことはできません。富裕層の方々は総じて、これらの要素を兼ね備えた本質的な価値を求めているからです。それでいて明確な回答でなければ、ご本人が納得することは決してありません。

 お陰様でこの仕事に携わって約30年、300件以上の案件を手掛けてきました。マイアミのセカンドホームにお住まいの方にはIoTスマートシステムを導入したり、ニューヨークの超高層ビル65階にお住まいの方にはベイパー仕様の暖炉を設置するなど、「期待値を超える提案」で喜んでもらえました。

 このクライアントの期待値を超える提案、もっと言えばサプライズにもなり得る仕掛けこそが富裕層向けのビジネスにとっては非常に重要になります。もし1人になる部屋が欲しいという要望があったとしても、孤立化させないようなデザインにすることで付加価値が生まれます。

 こういったサプライズは新しい知見やテクノロジーを貪欲に求めていかなければ実現できません。しかも、自分の目でしっかりと視察しなければ発想は広がらないのです。

 私は住まいのデザインを通じて、もっと日本のものづくりを海外の富裕層に提案していきたいと思っています。それが日本のものづくりの成長と技術伝承につながるからです。より良いものを適正な価格で富裕層に提供する新たなモデルを「住まい」から構築していきたいです。

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