【倉本 聰:富良野風話】ジャニーズ事件
財界オンライン / 2023年9月24日 15時0分
ジャニーズの問題が遂に、というか漸く表沙汰になった。かなり前、そう10年、20年ではすまない昔から僕らの業界では当たり前のように知られていた話だが、漸く断罪される時が来たらしい。
【倉本 聰:富良野風話】地球沸騰
何年前だったか、ある売り出しの女優を番組に起用しようとしたら、テレビ局から待ったがかかった。その女優がジャニーズのタレントと一寸トラブッたことがあったらしく、その女優を使うなら今後おたくの局から全ジャニーズ関連のタレントを引き揚げると脅されて、だからその女優は使えないのだと申し訳なさそうに局から言われた。その横暴さに啞然としたことがある。
芸能界には昔からそういう暴力団的風潮があって、いくつかの大手プロダクションには逆らえないという都市伝説的奇怪な掟がある。何度か敢えてそういう掟に、無鉄砲に逆らってケンカしたことがあったが、そこへ今回のジャニーズ事件である。
永年耐えに耐えた告発者の勇気には大きな拍手を送るものだが、さすがにここまでの真実を知らされると、永年この世界のはじっこにいたものとして自分の無知がくやまれる。でも、いつも送ってくるテレビ雑誌は、半分ジャニーズのPR誌の如き様相で、中身の半分はジャニーズのグラビア。どうなってるンだと年中思い、だが新聞をとっていない山奥暮らしの身には、これがないと番組表が判らない。
そこで思うのは、このジャニーズという怪物企業と日本のマスメディアの関係である。一体このつながりは何処から始まったのか。
ジャニーズの力を恐れているのは、関連マスコミの現場であるのか。それともマスコミのトップであるのか。そこのところが非常に知りたい。現場であるなら彼らは当然ジャニー氏の犯罪に気づいていた筈だし、気づいて永年見て見ぬふりをして来たのなら彼らも一種の共犯者である。いや、もしかしたらそういう風評を、多少とも耳にしたことのある僕ら外部の関連者も知らぬ間に共犯者になっていたのかもしれない。
そしてマスコミのトップに立つ者は、もちろん当然共犯者の一人だ。しかもそれがマスコミというものの経済基盤を支えるために、利益を得るために黙っていたのだというならば、報道というものは何とも情けない。彼らは犯罪の実体を知りながら、儲けるために見て見ぬフリをしつづけて来たわけなのだから。
ジャニーズにも、只見てくれが良いから、ミスター・ジャニーの犠牲になって売れたという者ばかりではあるまい。才能があって世に出たものは少なからずいる筈である。だが、ここまで事件が喧伝されると、あいつもヒョッとしてもしかすると、と、あらぬ色眼鏡で見られてしまうこともあるだろう。これは理不尽な風評被害である。ジャニーズのタレントは、これからそういう世の不条理に向き合うことになる。ミスター・ジャニーも罪作りである。
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