書評・冨山和彦 『敵対的買収とアクティビスト』(太田 洋著)
財界オンライン / 2023年9月23日 11時30分
株式会社に関わる全ての人々が読むべき格好の教養書
「敵対的買収」と聞くとショッキングな響きがある。「アクティビスト」も世代によっては、新手の総会屋や乗っ取り屋と思われるかもしれない。
刺激的な題名が目を引くが、著者は、企業が選ぶ弁護士ランキング上位の常連で、この領域で百戦錬磨、それも名ディフェンダーとして有名な人物である。このテーマは、専門性が高く、具体例で分かりやすく説明しようとすると様々な守秘義務の壁にぶつかる。しかし、本書はその難題を見事にクリアし、実のあるビジネス一般書となっている。
著者が序盤で提示する「敵対的とは、誰が誰に対して敵対的なのか」は、株式会社という仕組みの本質に迫る問いである。我が国では、従来、会社を従業員とその延長線上の経営陣の集合体として擬人的に捉える考えが主流だった。
そこに20年余り前から「会社は株主の所有物である」と擬物的に捉える勢力が現れ、資本市場、法廷、政策形成、言論など色々な場所で両者間の闘いが繰り広げられてきた。
私自身、企業再生の専門家として、退陣を余儀なくされる経営陣から見ると「非友好的買収者」として登場したことがあるし、逆に短期収奪的なアクティビストのTOB(株式公開買付け)に対し、激しい防衛戦をやったこともある。そこで見えてくるのは、極端な擬人化も擬物化も馴染まない、むしろ様々な利害関係者の法律的・有機的関係性という株式会社の実相だった。日本企業の長年の停滞の根本原因をその関係性の機能不全と考えたことが、私自身をコーポレートガバナンス改革に駆り立てた。
本書は、生々しい具体例と日米欧の敵対的買収史を縦糸、法理論的な解説を横糸に、私が多くの経験からたどり着いた株式会社の本質を浮かび上がらせる。
アクティビストによる株主提案が活発化し、敵対的買収がいつ自分の回りで起きてもおかしくない今日、経営者、従業員、株主など株式会社に関わる全ての人々が読むべき格好の教養書である。
『ガリア戦記』 冨山和彦・日本共創プラットフォーム社長の「今週の一冊」
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