非上場化で物言う株主退場も、”稼ぐ力”の育成が課題の東芝
財界オンライン / 2023年10月6日 7時0分
オリックスやロームなど、出資企業の思惑は?
「新しい株主の下、新たな未来に向かって大きな一歩を踏み出す。企業価値向上に向けて尽力していく」
東芝社長の島田太郎氏はこう語る。日本産業パートナーズ(JIP)を中心とした国内連合が東芝に対して実施していたTOB(株式公開買い付け)が成立し、年内にも自社が上場廃止する見通しになったことを踏まえた声明で、再起への決意を示した。
非上場化により、東芝を悩ませてきた海外投資ファンドなどのアクティビスト(物言う株主)は退場する。東芝は2015年に発覚した不正会計問題や17年の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)破綻などで経営危機に陥った。約6千億円を調達して債務超過を解消したが、増資を引き受けたファンドが大株主となり、東芝幹部らと度々対立。東芝が経営再建を目指して策定した会社分割案が株主総会で否決されるなど、混乱が続いた。非上場化はアクティビスト排除が目的だった。
ただ、JIP陣営の傘下で再生を図る東芝だが、株主が替わることで成長軌道に乗るかは未知数。これまでの経営難で財務を改善するために、白物家電や医療機器、半導体メモリー事業を売却してきており、22年度の売上高(3兆3616億円)は、経営が混乱する前の14年度の半分ほどに落ち込んでいる。
東芝はビッグデータ(大量データ)の分析や量子暗号通信技術などを将来の柱に据える考えだが、こうした分野はIT企業との競争が激しい。失墜したブランドイメージの回復も道半ばで、デジタル人材の獲得が進まない可能性がある。
JIP連合に参加しているオリックスやローム、中部電力などの思惑も東芝の行く末を左右しそうだ。「金は出すが口は出さない、ということは考えにくい」(業界関係者)状況で、島田氏のガバナンス手腕いかんによっては、東芝が成長戦略の推進に集中できるかは見通せない。
デジタル事業の拡大に当たっては、人材確保だけでなく研究開発や設備導入に多額の投資が求められ、不採算事業の整理が不可避との見方もある。東芝の難路は今後も続きそうだ。
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