元防衛大臣・小野寺五典「日本の防衛戦略には、この国を攻めさせないための〝抑止力〟と〝反撃能力〟が必要」
財界オンライン / 2023年10月11日 18時0分
サイバー攻撃に対処する法整備も必要
─ ウクライナ問題への対応や台湾有事への備えなど、戦後78年が経って、日本の安全保障・防衛のあり方を今一度議論するべき時に来ていると思います。小野寺さんは現状をどのように受け止めていますか。
小野寺 日本はもともと、専守防衛という考え方の中で防衛力を整備してきました。従来型の攻撃で日本が攻撃を受ける場合、例えば、どこかの国が爆撃機で日本を攻撃してくるとか、あるいは強力な軍艦が日本近海に出没し、日本の都市をミサイルや艦砲射撃で攻撃するとか、こういう従来型の攻撃に対しては、今まで十分な能力を持って対抗してきたと思います。
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ところが、今は戦い方が大きく変わり、戦闘機や爆撃機、軍艦のようなもので攻めてくるのではなく、相手の領土から長距離のミサイル攻撃をしてくるような戦い方が普通になってきました。同時にサイバーで重要施設に侵入して電力を止めたり、レーダーシステムを壊したり、このように戦い方が大きく変わってしまったんですね。
残念ながら、こうした戦いに日本は十分対抗できていません。これを少しでもキャッチアップしようとしたのが、昨年末に決定した、防衛費の大幅な増額や反撃能力の保有などを盛り込んだ新たな「防衛3文書」ということになります。
─ 3文書とは、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の3つですね。
小野寺 ええ。その中で、われわれは、相手の領土から攻撃してくるものに関して反撃をする反撃能力の保持を政府に決めていただきました。これがなければ日本が壊滅してしまうからでして、これは大きな決断だったと思います。
また、これからの議論になりますが、例えば、サイバー分野で日本が能力を持つためには国内の法整備も必要です。それを急いでやるということが大事だと思います。
─ サイバー攻撃への備えということですね。
小野寺 もう一つ、わたしたちが目指しているのは抑止力です。この国を攻めさせない。この地域で紛争を起こさせない。その抑止力のためには何が必要かというと、チーム力です。
すでに日本だけでは足りないので、同盟国の米国を含む日米豪印の協力枠組み「Quad(クアッド)」をつくりました。ただ、これだけでは、まだまだ中国やロシアへの十分な抑止力になりません。
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そこで今、わたしどもが協力を強めようとしているのがNATO(北大西洋条約機構)です。NATOの加盟国は、基本的に欧州と北米の安全保障条約ですから本来、日本は入りません。
とはいえ、NATO全部の防衛予算は、世界の防衛予算の7割を占めていて、ここが後ろ楯になるということは、とても大きいことだと考えています。
─ NATOとの連携は、どのような狙いがありますか。
小野寺 日本は今、次期主力戦闘機を英国・イタリアとの3カ国で開発しようと考えています。この装備がNATO各国で使ってもらえるような標準装備になると、日本の部品がないとNATOの戦闘機が飛ばないということになる。
それがしっかりできると米国だけでなく、日本の周辺国やNATOを含めた大きな仲間が加わることになり、抑止力は格段に高まります。
つまり、防衛装備の協力というのは、同盟を結ぶのと一緒だと思っていまして、そういう流れで政策を進めています。
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