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今や、都内の3台に1台が『S.RIDE』 なぜ今、ソニー発・タクシー配車アプリが人気なのか?

財界オンライン / 2023年10月13日 7時0分

今や、都内の3台に1台が『S.RIDE』のタクシーだ

累計ダウンロード数は200万を突破

「携帯のアプリを起動したら、設定がすぐに完了し、ワンスライドでタクシーを捕まえることができるのを、顧客体験の一丁目一番地にしている。タクシー事業者と一緒に、ユーザーの新しい乗車体験をつくりあげていくことができれば」

 こう語るのは、タクシー配車アプリ『S.RIDE(エスライド)』の開発を手掛けるS.RIDE社長の橋本洋平氏。

 S.RIDEは首都圏を中心に9都府県でサービスを提供。配車ごとにタクシー会社から得られる手数料収入や車内のタブレット端末を通じた広告収入、有料会員の課金などが主なビジネスモデルとなる。すでに約1万8千台、東京都内では約1万2千台が同アプリに対応。実に都内で走るタクシーの3台に1台がS.RIDEだ。

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 提携先のタクシー会社はグリーンキャブや国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブなど様々。タクシー会社は個々の会社の枠を越えて配車サービスを活用することで、タクシーを利用したい顧客が必要な時に必要な台数のタクシーを用意できるという仕組み。

「アプリの使いやすさは強みだと思っていて、半分くらいがヘビーユーザー。リピート率が高く、月10回以上のヘビーユーザーが多いのも特徴」(橋本氏)

 今年6月から8月まで3カ月連続で過去最多の月間配車件数を更新。1年前と比べて、配車件数は約2.1倍、予約数は約2.4倍に増加。累計ダウンロード数は200万を突破した。

 もっとも、近年はタクシーアプリが乱立。日本交通ホールディングスとディー・エヌ・エーが事業統合した『GO』を始め、米ウーバーや中国『DiDi』など、様々なアプリが登場している。特に国内で先行する『GO』は、すでに累計ダウンロード数は1500万を突破。全国44都道府県でサービスを展開している。それに比べて、S.RIDEの200万ダウンロードはまだまだ規模が小さい。

 それでも橋本氏は「ユーザーが増えすぎて空車を取り合って、全然捕まらないのでは意味が無いので、供給台数に見合った需要をとっていって、呼んだら捕まるという体制を維持したいと考えている。無理に需要を増やすのではなく、サービスレベルを見ながらユーザーの数も増やしていければ」と話す。




呼ぶ・支払うだけの機能が成熟化する中で…

 S.RIDEは2018年に「みんなのタクシー」として設立。ソニーグループ(以下、ソニーG)が持つAI(人工知能)やIT技術を駆使して、タクシーの配車サービスや決済代行サービスなどを手掛けてきた。

 最大の特徴は独自のデータ活用によるAI需要予測。過去の顧客の乗車データを収集し、どの時間にどこに車を走らせていれば、顧客が捕まりやすいかをAIが算出。タクシーにあるカーナビから運転手に知らせることで、より顧客の捕まりやすい状況をつくろうとしている。

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「ベテランのドライバーは過去の経験から、ここにいたら乗る人がいると分かっているが、AI需要予測を活用すれば新人さんでもお客さんをしっかり捕まえることができる。しかも、電車が止まっているからこの駅に人が多いとか、イベントが終わったのでここに人が多いというような、突発的な事象を教えてくれるのでドライバーはかなり助かると思う」(橋本氏)

 すでに提携先の一つ、大和自動車交通ではアプリ導入後、売上が約10%アップ。乗務員の採用や内諾率も軒並みアップしたという思わぬ結果も出ている。

 タクシー業界を見渡すと、タクシー運転手の人手不足は深刻な事態。コロナ禍で人の移動が減り、タクシー需要が減少。離れていった運転手が戻らず、コロナが収束して人の移動が回復した今、営業所にタクシーはあるのに、運転手がいないためタクシーを配車できないのだ。

 そうした状況の克服に向け、テクノロジーの活用で人手不足の解消や売上増につなげることができれば、タクシー業界にとっても大きな意味があるのではないか。

「タクシー産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きな課題となる中、AI需要予測によるドライバー支援など、われわれが貢献できる役割はまだまだある。需要の多い時間帯に、最適な供給(タクシー)を配置することを第一に考えていて、需要の無いところで待っていても意味はない。需要のあるところに供給を促してあげることが大事だと思う」(橋本氏)

 現在はラグビーのワールドカップが開催中だが、日本代表の応援につながるよう、代表選手の特別デザインでラッピングされたタクシーも走行。アプリから指定配車すると、日本代表応援ギフトが抽選で当たる他、ソニーGの人気アニメ『シティーハンター』とコラボしたタクシーも登場。配車すると携帯電話にテーマ曲が流れ、車内で前作の映画が鑑賞できるという。

「多くのアプリが登場する中、もう移動の呼ぶ・支払うだけの機能は成熟化してきて、乗った時の楽しさや移動体験、誰もが乗りたくなるような仕掛けは世界でもまだ手を付けられていないところだったりする。エンタメやスポーツのコンテンツを交えながら、呼ぶ・払う以外の移動体験をもっと楽しんでもらえるような仕組みをつくっていきたい。これがソニーらしさかもしれない」と語る橋本氏。

 ソニーGのパーパス(存在意義)は『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。』というもの。タクシー配車アプリの開発においても、その原点は変わらない。

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