【病に倒れた父の後を継ぐ】小林久敏・サンブロス社長の転機とは?
財界オンライン / 2023年10月17日 11時30分
「知らないことが多すぎる」─。2016年、原因不明の病に倒れた先代社長の父が入院して亡くなり、私が後を継ぐことになったのですが、あまりに突然のことで頭の整理さえもできていない状態でした。
【一日生きることは、一歩進むことでありたい。】砂川和雅・キャスレー ディープ イノベーションズ社長の”忘れられないこの言葉”
祖父が1965年にセーターの生産で創業したのが当社。父や母から帝王学を教えられたわけではないのですが、気がつくと他人とは違う発想をするようになっていました。中学校の部活では小学校でやっていたサッカー部ではなくテニス部に入部。「年をとっても少ない人数でできるし、場所もグラウンドは必要ない」と思ったからです。
また、1990年代に大学を卒業して米国ではなく中国に留学したのですが、このときも「今は生産地として中国は捉えられているが、将来は一大消費地になる」と考えたからです。
大阪の商社での経験も糧となりました。その会社は創業社長によるワンマン経営。営業力が抜群の会社でした。営業マン時代に社長から課せられた論文の感想文で、私は「企画力や商品力を活かすことがもっと成長できる」と意見を述べたのです。
周囲からは心配されましたが、社長からは管理部門で経営を勉強するよう声をかけていただきました。そこで父に相談したところ、「それなら戻ってきなさい」と言われ、27歳の96年に当社への入社を決めました。
商社での経験を生かしながら手伝っていた中、元気だった父が体調を崩したのです。私が社長を継ぐことになったときは社員の給与ソフトの暗証番号も、銀行や証券、保険の契約についても全く分からない状態でした。
今になって半世紀の歴史を持つ当社の社是「創意工夫・熱意努力・誠心誠意」という守るべきものは守り、一方で時代にそぐわないものは変えていくといった社長らしいことができるようになりました(笑)。
そして、小売店が魅力的な売り場を作れるように商品とデジタルを活用した販促サービスを一緒に納品する展示会を提案するなど、メーカー・小売り、お客様、そして従業員の〝三方よし〟を実現できる100年企業を目指しているところです。
私の経験を通じて言えることは、会社経営では親子喧嘩がよくありますが、父親には経営を継いでくれる息子がいること、一方の息子には最終ジャッジをしてくれる人がいること。お互い、存在のありがたみを忘れないことが大切だと思います。
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