〈日本企業で初〉富士通が国産量子コンピュータを開発
財界オンライン / 2023年10月18日 7時0分
「いろいろな知恵を出しながら、将来の社会実装を目指す第一歩になったのではないか」
こう語るのは、富士通量子研究所長の佐藤信太郎氏。
富士通と理化学研究所(以下、理研)が、次世代コンピュータ『超伝導量子コンピュータ』を開発した。国産としては2号機だが、民間企業が主導した量子コンピュータでは初めて。金融や創薬をはじめ、様々な分野の共同研究を行う企業や研究機関に提供していく方針だ。
複雑化する社会課題の解決には、膨大な選択肢から最適な組合せを導き出すことが求められる。この組合せ最適化問題を高速・高精度に解くために開発が進められているのが、量子コンピュータ。まだまだ実用化に向けた課題が山積しているとはいえ、従来型のコンピュータの処理性能を超えた高速な計算が可能な量子コンピュータの実用化が期待される所以だ。
2019年には米グーグルの試作機が既存のスパコンで1万年かかるとされた計算を3分で解いたとして話題になった。現在は創薬や気候変動など、現在のコンピュータでは解けない様々な課題への適用が期待されている。
スーパーコンピュータ『富岳』を共同開発したことで知られる富士通と理研は、2021年に「理研RQC-富士通連携センター」を設立。理研が今年3月に公開した国産初号機の開発ノウハウをベースに、新たな64量子ビットの「超伝導量子コンピュータ」を開発した。
スパコンや量子コンピュータの開発は、国の経済安全保障戦略とも密接に絡む。すでにグーグルやIBM、そして、中国企業が自前の技術を確立しようと、各国で開発競争が加速。日本勢は海外勢に比べて遅れていたが、今回の富士通をはじめとする日本勢はこれから巻き返しを図ることはできるのか。
開発に先行しているとはいえ、米国にしろ、中国にしろ、量子コンピュータの実用化はまだまだ先の話。モノづくり国家を標榜する日本にとって、量子コンピュータの開発や実用化は大きな試金石となる。
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