課題山積の植田日銀 政策修正を求める声も強まる
財界オンライン / 2023年10月27日 11時30分
日銀総裁に初の学者出身となる植田和男氏が就任して半年が過ぎた。7月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正し、長期金利(10年物国債利回り)の上限を0.5%から事実上1.0%に引き上げた。さらに、9月上旬には新聞のインタビューで短期のマイナス金利解除にも言及し、黒田東彦前総裁が10年間にわたって続けた異次元緩和策の出口に前向きな姿勢を示した。
植田氏は緩和修正に積極的な姿勢をアピールしたが、輸入コスト増大で「悪い物価上昇」を助長する行き過ぎた円安を是正したいとの思惑が滲む。
米国でインフレ圧力が収まらず、米連邦準備理事会(FRB)が追加利上げを示唆する中、日銀が異次元緩和に固執したままでは「1ドル=150円台を大きく突き抜けて円安が進み、歯止めがかからなくなる」(米証券アナリスト)との懸念も出る。
日銀には円安・物価高に暮らしを圧迫される国民や中小企業経営者らから「いつまで異次元緩和を引っ張るつもりか」などと批判の声が多数寄せられているといい、追加の緩和修正のタイミングを図る局面にある。
最大の障害と言えるのが、「今や衆院解散・総選挙をいつ打つかしか眼中にない」(財務省筋)とされる岸田文雄政権が再び大規模な経済対策・補正予算編成をぶち上げていることだ。
国の借金が国内総生産(GDP)の250%超にも膨らむ中、事実上の財政ファイナンスを担う日銀が緩和の再修正に動けば、バラマキ財政の継続と相まって長期金利の急騰を招き、国の財政運営を混乱させかねない。円安・物価高の是正と国家財政の資金繰り維持という相矛盾する2つの課題を背負わされた日銀は、孤立感を深めている。
日銀は財政の混乱を招かないことを最優先せざるを得ず、大規模緩和を続け、その結果、円安に歯止めがかからない。物価上昇に家計や中小企業の不満が募る中、政府はそれを宥める為に財政出動で物価高対策を講じるという悪循環の繰り返しが懸念されている。YCC撤廃など政策修正を求める声も強まる。日銀は早くも正念場を迎えているようだ。
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