【厚生労働省】認知症対策で初会合 「予防」と「共生」を強化
財界オンライン / 2023年10月20日 11時30分
政府は、認知症の人やその家族、有識者らが参加する会議を立ち上げた。6月に基本法が成立したことを受けたもので、認知症の人を含む誰もが希望を持って暮らせる「共生社会」の実現に向け、意見交換を行う。
年末にも意見を取りまとめ、岸田文雄政権が「国家プロジェクト」と位置付ける認知症対策の2本柱である「予防」と「共生」を強化する方針だ。
認知症の人は、高齢化により増加を続け、2040年には高齢者の4人に1人に当たる約953万人に達すると推計される。介護者と要介護者の双方が認知症である認認介護や介護離職につながる懸念もあり、対策が急務だ。
認知症予防は、発症や進行を遅らせることを指す。治療薬を巡っては、製薬大手・エーザイなどが共同開発した「レカネマブ(商品名・レケンビ)」が国内で正式承認されるなど、世界をリード。政府は国主導で創薬開発や脳科学研究を加速させようと、省庁横断のプロジェクトを創設し、24年度予算概算要求では最大300億円の関係費を計上した。
ただ、現状では治療薬の対象が初期患者に限られる上、根本的な治療法は開発されていない。厚生労働省老健局の幹部は「認知症になった人が絶望しないよう日常生活をサポートしていくことも重要だ」と強調。高齢や認知症になっても、住み慣れた地域で安心して生活できる共生の基盤整備を急ぐ。
しかし、9月27日の初会合では岸田首相から「共生」のキーワードが一度も登場しなかった。構成員の1人は会議後、「(会議は)本人参画を始める第一歩」と評価しつつ、「政府は治療薬などの医学的な部分を重視していると感じた」と話した。さらに、会議の進行について認知症当事者からは「(本人目線で)もう少しゆっくりやってほしい」との指摘も上がったという。
政府は基本法の施行後、首相を本部長とする推進本部で施策の骨格となる基本計画を定める予定だが、共生社会の実現に向けて、こうした当事者らの声を「聞く力」が求められている。
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