【著者に聞く】『エネルギー危機の深層 』JOGMEC調査部調査課長・原田大輔
財界オンライン / 2023年10月21日 11時30分
今は、日本がエネルギー安全保障を再検討する大きなチャンス
今、世界はエネルギー危機の真っ只中にある―─。
これはIEA(国際エネルギー機関)の旗艦レポートである最新の世界エネルギー見通しに書かれ、5月に開催された主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)でも共同声明に盛り込まれた言葉である。
過去、何度かエネルギー危機と呼ばれた局面はあった。しかし、今回は石油という単体のエネルギーではなく、エネルギー業界全体に派生している点で、これまでにない様相を呈している。
何をもってIEAは危機だと言っているのか?
日本にいるとあまり危機感を感じにくいかもしれない「エネルギー危機」というテーマについて、今回の刊行は、ロシアがトリガーを引き、激変するエネルギー情勢の中で、日本はどう対応すべきか? 世界第5位のエネルギー大消費国である日本の立ち位置はどうあるべきかについて分析する貴重な機会となった。
執筆にあたっては、特に昨年2月のロシア・ウクライナ戦争がもたらした石油ガス市場における激震の現状、そして今後想定されるシナリオ、ウクライナ戦争前からあった両国のエネルギー問題や、侵攻後の西側諸国による対露制裁や、それに対するロシアの対応を、エネルギーという側面から分析することで、読者に新たな視点を提供しようと心掛けた。
エネルギー問題というのは、複雑に各国の思惑や社会情勢が絡んでくる。
今回の戦争の前から、すでにエネルギー分野では変革に向けた胎動が始まっていたことも重要である。コロナ禍によるエネルギー需要減退と経済停滞、その復興の起爆剤としての欧州発で世界のコンセンサスともなったと言われる脱炭素の動きである。
では、コロナが終息したら脱炭素の流れはどうなっていくのだろうか? また、注目されるカーボンニュートラルという世界潮流に対して、日本は長期に亘るエネルギーミックスをどう考えていくべきなのか? こうした個々の問題に向き合いながら、日本はエネルギー危機にどう対応すべきなのか? ということをまとめさせていただいた。
わたしは今が、日本がエネルギー安全保障を再検討する大きなチャンスだと考えている。
世界の約7割が化石燃料に依存している中で、脱炭素という名のもとに、本当に化石燃料という選択肢を捨てていいのか? 再生可能エネルギーを増やすのは当然としても、風や天候不順で発電が安定しないという脆弱性をどう克服していくべきなのか?
こうしたことをトータルに検証しながら、日本企業が持つ様々な技術を生かして、これから脱炭素を実現するための新たなエネルギーやサービスの創出に、本書がお役に立てることを期待している。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
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