東レ社長・大矢光雄の「先端素材を生み出す会社として社会に貢献する。私が舵を取り、難局を乗り切っていきたい」
財界オンライン / 2023年11月29日 7時0分
「きちんと航路を間違えないように私が舵を取り、荒波に向かっていく。そして全社一丸で難局を乗り切っていきたい」─。
東レ社長の大矢光雄氏は、就任にあたって強い決意を述べた。それは2022年度まで進めてきた前中期経営課題「AP―G 2022」には反省点が残ったからだ。成長領域での売り上げ収益については目標に対してクリアできたものの、事業利益は大きく未達に終わった。
大矢氏にまず課せられているのが、今年度から25年度までの中期経営課題「プロジェクト AP―G 2025」の完遂。
大矢氏は繊維営業一筋という根っからの営業マン。東レは技術力に定評があるため、どうしても部門ごとの「縦割り」で、それぞれの分野を深掘りする傾向が強かった。しかし、例えば自動車の世界でガソリンエンジン車から電気自動車へのシフトなど大きな変化がある中、縦割りではマーケットの変化への対応が遅れたという反省がある。
そこで、社長就任前の22年6月にグローバルで横断的に対応するための組織として「マーケティング部門」を新設。
技術面では縦割りになりがちなところを「技術センター」という組織で、部門横断的に素材を創出できるように横串をさしていたのに続き、「マーケティング部門」でマーケットとサプライチェーンの変動に素早く対応する体制を整えた。
そして今は、大矢氏の考えを社内に浸透させる取り組みが進む。各地の事業所を直接訪問することはもちろんだが、社内のイントラを使って、昼食時間に「リアルトーク」というタイトルで、大矢氏と東京本社や、各事業所のメンバーとの対話を生放送するなどして、全国にメッセージを届けている。
これによって、今年から始まった中期経営課題で目指すもの、大矢氏が考える会社の方向性などを、全社に伝えることを目的としている。
理系、技術系出身で、理詰めで本質論を説く現会長の日覺昭葊氏の個性とはまた違い、文系、営業出身の大矢氏は「フルスイングしよう」、「もう一歩前へ出よう」というエモーショナルな、わかりやすい言葉で社内を鼓舞している。
社長就任時にも「東レは自由闊達な会社。社員にはチャレンジして欲しいと常に言っている。チャレンジして、時に失敗することも大事だと思う」と話していた大矢氏。
東レの企業理念は「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」というもの。常に先端材料を創出し続けることに加え、それを顧客に適切に届けること、それが大矢氏に課せられた使命と言える。
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